東京海洋大学は旧東京商船大学と旧東京水産大学が2003年に統合して設立された国立大学です。国内唯一の海洋系大学として、「海を知り、海を守り、海を利用する」ことをモットーに、海洋生命科学部、海洋工学部、海洋資源環境学部の3学部を有します。学生数は大学院も含め3000人弱と規模の大きな大学ではありませんが、専門性が高く、海洋国家である日本にとって重要な教育機関です。船舶の船員養成も行っています。
東京海洋大学では、一般向けにも附属図書館を開放してくれています。海洋に特化した専門性の高い図書館で、品川本館(26万冊)と越中島分館(22万冊)の2つがあります。今回は越中島分館を訪問したレビューです。
東京海洋大学越中島図書館レビュー

【資料の充実度】資料数22万冊で大規模図書館に匹敵する規模。海洋に特化した資料が多く、海好きにはたまらない図書館。気象など海洋に関わる資料も豊富。
【学習・作業性】すべての閲覧席に蛍光灯とコンセントが有り、持込パソコンで作業ができます。学外者用のWi-Fiはなし。机の作業範囲も広い(52cm×80cm)。
【居心地・雰囲気】おそらく築50年以上の建物で昔ながらの落ち着いた図書館を味わえます。清潔感もあり眺めもよく快適。館内のトイレはウォシュレット付きですが、ちょっと古めのトイレ(15年くらいは経過か)。
【アクセス】JR京葉線「越中島」駅 徒歩4分。大学の門を通過するときは緊張しますが、大丈夫です。
【独自性】100年以上の歴史を持つ大学で「海洋」に関する古今東西の専門書を所蔵しています。
【おすすめ度】建物は古いですが、昔ながらの大学の図書館。人も少なく、作業学習に集中できる。しかしあくまで学生のための図書館なので積極的に学外者におすすめするのもどうかと思い☆4.5です。
| 持込パソコン利用 | 電源 | Wi-Fi |
| ◯ | ◯ | × |
東京海洋大学越中島図書館について
基本情報
| 開館時間 | □月〜金曜日:8時30分~20時00分(長期休業中は9時00分~17時00分) □土曜日:9時45分〜17時00分(長期休業中は休館) □毎月末日:13時00分〜20時00分(長期休業中は休館) ↓↓<<開館日・休館日は必ずチェック>>↓↓ 東京海洋大学附属図書館カレンダー https://lib.s.kaiyodai.ac.jp ※越中島図書館はリンク先で下にスクロールしてください |
| 休館日 | ■日曜、祝日、年末年始(12/29~1/3) ■長期休業中の土曜日 ■長期休業中の毎月末日 ■大学一斉休業日(8月中旬の2日間) ※都合により臨時休館有り ↓↓<<開館日・休館日は必ずチェック>>↓↓ 東京海洋大学附属図書館カレンダー https://lib.s.kaiyodai.ac.jp ※越中島図書館はリンク先で下にスクロールしてください |
| 所在地 | 〒135-8533 東京都江東区越中島2-1-6 TEL:03-5245-7362 |
| 交通機関 | ・JR京葉線・武蔵野線「越中島」駅 徒歩約4分 ・東京メトロ東西線・都営大江戸線「門前仲町」駅 徒歩約12分 ・東京メトロ有楽町線・都営大江戸線 「月島」駅 徒歩約13分 |
※学外の人のための車、バイク、自転車を置く場所はありません。必ず公共交通機関を使ってください。大学側のご厚意で一般人にも開放されているので、大学に迷惑をかけないようにしましょう。なお、障がいなどの理由がある方については事前に大学に相談してください。
越中島図書館 館内の様子
蔵書数:図書22万5807冊 雑誌4285種(2024/3/31時点)
閲覧席数:90席(北西側閲覧席はコンセント無し)
机の広さ:縦52cm × 横80cm(教科書とノートをどちらも見開きで作業ができる)
館内では持込のパソコンの使用が許されています。多くの席にコンセントが用意されているので、実質的に無制限に作業ができます。

学外の人も利用できる開かれた大学図書館
越中島駅と東京海洋大学は隣接している
東京海洋大学は越中島駅と隣接しており、徒歩4分で図書館までたどり着くことができます。越中島駅を出ると、長い壁と鉄格子が現れます。これが東京海洋大学キャンパスの外壁です。

キャンパスの入口は越中島駅の出口からは少しは離れています。キャンパスの壁に沿って北西側・南東側どちらに進んでも入口がありますが、南東側の門のほうが図書館へ行くには近いです。壁沿いに駅から約120メートルほど歩きます。門全体が開放されていないときは、横の小さな通用口が開いているので、そこから入りましょう。守衛さんはいますが、手続きなども必要ありません。そのまま通過しましょう。
学外の人は図書館入口で簡単な『受付簿』を記入するだけ
図書館の入口は建物の2階にあります。暗くて見つけづらいですが、エレベーターもあります。

外階段を上がり中に入ると左手に受付がありますが、そこに立ち寄る必要はありません(受付に人がいないことも多いです)。入館時には、入口付近の小さな台に置かれた受付簿に「入館時刻」「居住地域」「来館回数」といった簡単な項目を記入するだけで大丈夫です。名前や住所を書く必要もありません。退館する際も、同じ用紙に退館時刻を記入してから退出してください。
館内は昔ながらの古きよき図書館
館内は本棚と閲覧席が規則正しく配置された、シンプルで整然とした造りになっています。建物にはやや年代を感じさせる部分もありますが、それがかえって落ち着いた雰囲気があり、学習や作業に集中するには最適です。何十年前に貼られたのかわからないほど茶色くなってもキレイに残っている壁の張り紙を見ると歴史の重みと物持ちの良さを感じます。大きな窓からは自然光が差し込み、開放感も抜群。2階に位置しているため、キャンパス内の景色や近くを流れる運河を眺めることもできます。
Wi-Fiは無し!
学外者に対してWi-Fiはありません。

Wi-Fiがなくてもすばらしい図書館です。
貸出もできますが、ご利用は慎重に!
東京海洋大学では学外者でも本を借りることができます。ただし返却期限が厳格なので注意しましょう。
図書館利用証は誰でも作れる!
利用登録をすれば学外者にも「図書館利用証」が発行され、東京海洋大学附属図書館での本の貸出を受けることができます。発行した図書館利用証は東京海洋大学の品川図書館と越中島図書館で利用できます。
【利用登録受付時間】 月~金曜日 9:00~11:30、13:00~16:30
<図書館利用証の作り方>
必要な物:現住所記載の身分証(マイナカード・運転免許証・学生証など)※
作成時間:10分程度
※現住所が記載されてない場合は、身分証と現住所を確認できるもの(住民票、最近1ヶ月以内に公的機関から自分宛てに届いた郵便物など)をあわせてご提示ください。
図書館利用証は年度更新制
図書館利用証の有効期限は、その年度内(4/1-3/31)に限られます。たとえば3月1日に利用証を発行しても、年度末の3月31日を過ぎるとその利用証が無効になります。4月1日以降に図書館で本を借りる場合は、あらためて新しい利用証を作成する必要があります。
貸出ルール
東京海洋大学での本の貸出の限度は次の通りです。
【貸出冊数】10冊
【貸出期間】2週間
※返却期限の過ぎていない図書に限り、1回のみ2週間の延長が可能。インターネットでも申請ができます。
東京海洋大学附属図書館(https://lib.s.kaiyodai.ac.jp)
返却期限日を過ぎると年度中の貸出が停止になります


公共の図書館であれば多少、返却期限を過ぎてもペナルティはありませんが、東京海洋大学の図書館ではその年度中(3/31まで)の貸出が不可能になります。言い換えればルールを守らない人には二度と(年度中は)本を貸しませんよということです。
東京海洋大学の図書館はあくまで学内者のための図書館です。学外の人には、大学側のご厚意で開放してくれているわけですから、ルールを守らない人に温情措置をする義理はないのです。そこをきちんと理解して利用しましょう。
なお、図書館利用証を作る際にメールアドレスを記入しますが、返却日前日になるとそのアドレスに返却期限をリマインドしてくれる連絡がくるので便利です。
返却は郵送でも可能!
東京海洋大学図書館では郵送での返却も受け付けています。ゆうメールの書留扱いか宅配便で、返却期限日までに、下記宛先に送ってください。特にCD・DVDは破損・汚損防止のため、しっかり梱包しましょう。
資料返却先
【越中島キャンパス図書館】
〒135-8533 東京都江東区越中島2-1-6
東京海洋大学附属図書館 越中島分館 情報サービス第二係
越中島図書館あるある
席を選ぶときはエアコンの位置に注意しよう
越中島図書館のエアコンはオフィスなどでよく見かける天井埋込み型で4方向に風が出てきます。風量が強いので風がよく当たる席に座ってしまうと作業中に風が気になってしまいます。座ってみて風の具合を確かめながら席を選びましょう。


「盗難に注意!」の張り紙が多数
越中島図書館の閲覧席には、それぞれの席に「盗難注意」と書かれた張り紙が掲示されています。「そんなに物騒な場所なの?」と思ってしまいますが、紙自体がかなり古いものなので、過去に起きた事例を受けて貼られたものがそのまま残っているのだと思われます。
ちなみに掲示してある事案の具体例では、「席を外しているスキに財布の中からお金だけ抜き取られていた(発生日時は10年前)」、というもののようです。資料探しから席へ戻ったときに荷物があって安心かと思いきや実は財布の中身だけ抜かれているので被害にあっても気付きにくそうですね。
席を離れる際は貴重品を必ず持ち歩くようにしましょう。どの図書館でも当たり前のマナーです。余計なトラブルを生まない・巻き込まれないことが、気持ちよく安心して図書館を利用するための大切な心がけです。
資格取得・職業訓練の資料が豊富
大学の図書館には資格取得やスキル向上のための資料が豊富に揃っています。私は特にプログラミング関連の資料が充実している点を気に入っています。パソコンを持ち込んでプログラミングの勉強をすれば、この図書館だけで学習が完結します。プログラミングの専門書は大きく価格も高いため、自分で揃えるのはハードルが高いですが、この図書館なら豊富な資料に囲まれながら、静かな環境で集中して学べます。
東京海洋大学図書館は自然科学の書籍も豊富に揃っています。私は特に気象予報士の勉強でお世話になっています。一般の図書館では気象学の専門書があまり多くないことが多いですが、この図書館にはさすがに充実した資料が揃っています。船乗りにとって気象の知識は生死を分ける重要なものですから、東京海洋大学図書館ならではのラインナップだと感じました。
遠い昔を感じられる古い資料も多数
東京海洋大学は、旧東京商船大学と旧東京水産大学が統合して設立されましたが、図書館の資料は統合前の両大学の蔵書をそのまま合わせたものです。そのため、古い本には「東京商船大学」や「東京水産大学」といった蔵書印が押されていて、歴史を感じさせます。
また、1960年代に印刷された本も多く所蔵されています。本は茶色く変色しているものの状態は非常に良く、最後のページに貼られた貸出票を見ると、この60年間一度も借り出されたことがない本も見つかりました。これまで誰の目にも留まらなかった一冊の歩みを思うと、なんとも切ない気持ちになります。
伝統ある大学図書館ならではの、貴重な出会いでした。


長期休暇中は閑散、授業期間中は学生の休憩所
大学の長期休暇中でも図書館は開館時間を変更しながら解放されています。当然ながらほとんど人がいないため、図書館がほぼ貸切状態になります。
大学の授業期間中でも座れないほど混雑することはありませんが、授業の合間に学生たちが休憩にくるので少しバタバタすることがあります。
図書館周辺施設
東京商船大学1号館
東京海洋大学の前身である東京商船大学時代の本館は、昭和7年(1932年)に東京高等商船学校1号館として建てられました。鉄筋コンクリート造りで、外壁はスクラッチタイル貼り、玄関は半円形の大アーチが特徴です。
戦後まもなくは、現在の自衛隊の前身である警察予備隊の本部としても使用された歴史ある建物です。また商船学校としての実習機能も備えており、屋上は船橋を模した設計で、さまざまな航海機器が配置されていました。
この歴史的な建物は平成9年(1997年)に登録有形文化財に指定されています。


練習千明治丸
明治丸は明治7年(1874年)、英国グラスゴーのネピア造船所で建造された鉄製の灯台巡視船です。日本政府が灯台業務のために発注し、翌年に横浜へ回航されました。
この船は灯台巡視のみならず、明治天皇や政府高官の御召船としても活躍し、豪華な特別室やサロンを備えていました。明治8年には小笠原諸島の領有調査にも使われ、この調査を経て小笠原諸島は日本領土となりました。
さらに明治9年、明治天皇が東北・北海道巡幸の際に明治丸に乗船し、7月20日に横浜に無事帰港しました。この日が「海の日」の由来となっています。ちなみに近年は祝日法の改正により、海の日は7月第三月曜とされ、必ずしも7月20日とはなっておりません。
明治29年からは東京海洋大学の練習船として使用され、関東大震災や東京大空襲の救援活動にも貢献しました。現在は重要文化財に指定され、東京海洋大学で保存されています。





7月20日が「海の日」になるきっかけになった船なんだね(゚д゚)





さかなくんへのメッセージを見つけて写真を撮りに行ったら、となりの「ポケモンGO目的のキャンパスへの立ち入り禁止」も気になってしまい、そちらがメインのような写真になってしまいました。
近隣図書館
周辺には江東区や中央区の図書館もあり、散歩がてらの1日図書館めぐりもできます。
※所要時間は東京海洋大学越中島図書館から計算しています。
江東区立古石場図書館(徒歩11分 0.8km)
古石場図書館は、1997年に江東区古石場文化センターの4階に開館した図書館です。静かな住宅街に位置し、地域ゆかりの映画監督・小津安二郎に関連する映画資料を多く収蔵しています。約12万点の資料があり、閲覧席や児童コーナー、インターネット端末も備えています。門前仲町駅からは徒歩11分の便利な立地です。
中央区立月島図書館(徒歩20分 1.4km)
中央区立月島図書館は月島区民センター3階にある中規模の図書館です。1914年に東京市立月島簡易図書館として創設され、関東大震災や戦時中の休館を経て、1988年に現在地へ移転しました。地域資料が充実しており、月島・佃・築地の歴史文化を深く知ることができます。石田衣良の小説にも登場し、地域に親しまれる存在です。絵画「佃祭」も館内に展示されています。
江東区立深川図書館(徒歩25分 1.8km)
深川図書館は1909年(明治42年)に東京市立図書館として開館しました。1923年の関東大震災で焼失後、1928年に清澄公園内に鉄筋コンクリート造の3階建てとして再建され、1950年に江東区へ移管されました。現在の建物は1993年に改築された三代目で、明治・大正期のデザインを継承しつつ、ステンドグラスや吹き抜けの階段など歴史的趣を感じさせる個性的な造りとなっています。図書館の内装と外観だけでも見に行く価値があります。
まとめ
東京海洋大学越中島図書館は、海洋分野を中心に専門性の高い資料を揃え、学外者にも無料で開放されています。「越中島ってどこ?」と思われるかもしれませんが、東京駅からJRでわずか2駅、電車と徒歩を合わせて約15分でアクセスできます。興味のある方は一度訪れてみる価値があるでしょう。キャンパス内には練習船「明治丸」や日本最古の天文台など、多くの歴史的建造物もあり、それだけでも楽しめます。
ただし、あくまで在学生向けの図書館のため、多くの方に積極的におすすめできるわけではありません。それでも、こうした隠れた穴場スポットとしてご紹介したいと思います。今後も知る人ぞ知る魅力的な図書館をどんどん発掘していきたいですね。




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