仲よく散歩している夫婦を見て、「あのふたり、おしどり夫婦だね!」と言うことがありますよね。
実際のオシドリは、色あざやかなオスと、落ち着いた茶色のメスが寄りそって泳いでいます。その姿は、まるで「ずっと一緒だよ」と約束しているみたい。オシドリは、「おしどり夫婦」というワードが象徴するように仲のよい夫婦の象徴として知られてきました。
でも、鳥のオシドリは我々がイメージするように、一生同じ相手と連れそって暮らすのでしょうか? 実は、オシドリの「つがい」は、人間のイメージとは少しちがうようです。

おしどり夫婦は「一生一緒」ではない。毎年相手が変わる
オシドリのオスは、繁殖の季節が近づくと、緑や紫に輝く頭や、オレンジ色の羽をまといます。メスは目立ちにくい茶色の羽。ずいぶんちがう見た目ですが、ふたりで並んで泳ぐ姿はとても印象的です。
オシドリは繁殖期ごとに毎年、異なる相手とつがいをつくり、繁殖の季節が終わると別れるとされています。冬に寄りそうペアを見かけても、「一生の相手に決めた」とは限らないのです。
ただし、「毎年かならず相手を変える」と決まっているわけでもありません。同じ相手と次の年にもつがいになった例が報告されています。鳥にもそれぞれの出会いと別れがあるわけですね。
オシドリの巣は、木のうろの中に
春が近づくと、メスは水辺の木にある、うろを巣にします。木のうろとは、幹にできた穴のこと。高い場所にあることもあります。
卵をあたためるのはメスです。オスも抱卵の時期にメスの近くにいたり、巣の周りで見張るような行動をしたりすることがありますが、卵をあたためる役目はしません。

ヒナの冒険は、巣の外から始まる!
卵からかえったヒナたちは、巣の中で大きくなると、木のうろから外へ出ます。巣は高いところにあることもありますが、ヒナはそこから地面へ飛び降ります。そして、メスのあとを追って水辺へ向かうのです。
小さな体で、巣から地面へ。そして水辺へ。ヒナたちの大冒険を、メスが先頭に立って導きます。オシドリの親子を見かけたら、その後ろをちょこちょこと追うヒナたちにも注目したくなりますね。
「おしどり夫婦」は、まちがいなの?
「おしどり夫婦」は、仲のよい夫婦をたとえる言葉です。オスとメスが寄りそう姿や、中国の故事「鴛鴦(えんおう)の契り」などが、この言葉のイメージにつながったとされています。ちなみに鴛鴦とはオシドリのことです。
だから、仲の良い夫婦を見て「おしどり夫婦」という言葉で表現するのはまちがいではありません。ただ、オシドリが一生同じ相手と暮らす、と誤認して「おしどり夫婦」の言葉を使うと、それはオシドリの実際の生態とはちがいます。「おしどり夫婦」という言葉にも「長年連れ添った」という意味は含まれていないようなので、夫婦が連れ添った期間ではなく、今の夫婦の状態を意味する言葉と認識した方がよいでしょう。
寄りそって泳ぐ姿から生まれた、仲よし夫婦のイメージ。その一方で、オシドリたちは季節の出会いを重ね、メスがヒナを育てます。人間の物語とはちがうけれど、春を待つペアや、木のうろから旅立つヒナたちにも、心に残る物語があります。
池でオシドリを見かけたら、こう思ってみてください。
「このふたりは、今年どんな春を迎えるのかな?」
※つがいの関係やオスの行動には個体差があります。「毎年必ず別れる」「オスはすぐにいなくなる」と一律には言えません。
一夫一妻の鳥はちゃんといます
おしどり夫婦のオシドリが、意外とカジュアルな恋愛関係なのに対し、生涯継続する永続的なつがい関係の鳥もいます。
例えば、アホウドリ。生涯でつがいが崩壊(離婚)する確率は2%と極めて低いです(人間の場合は約30%)。他には、ハクチョウ類やツル類などの大型の鳥は配偶者が生きている限り、つがいでいることが多いそうです。もし仲の良い老夫婦を見つけたらおしどり夫婦ではなく、アホウドリ夫婦の方が言葉として正解なのかもしれません。

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