現代の公立図書館は、多くの人にとって「無料」で本や資料を利用できる場所として親しまれています。1冊買うと1000円、2000円あるいは数万円もする本も図書館でならタダで閲覧・貸出ができるのは魅力的ですよね。
ではなぜ図書館は無料なのか、ご存じでしょうか?
「国民の税金で賄われている公共サービスだから」
仕組みで言えばその通りですが、図書館を無料にしているのには深い歴史的背景と社会的意義があるのです。
まず、日本の「図書館法」では、公立図書館が入館料や資料利用料を徴収してはいけないと法律で厳格に定められています(図書館法第17条)。もし公立図書館で料金を取っているところがあったら法律違反なので警察に通報しましょう。この「無料原則」はすべての国民が経済状況に関わらず平等に知識や文化資源にアクセスできることを保障するためです。無料で提供されることで、読書の習慣を広げ、教育レベルを向上させ、民主主義社会の基盤を支える重要な役割を果たしています。
歴史的には、戦前の日本では閲覧料を取る図書館も多く存在しました。利用料は1銭程度で現在の価値で200円程度、パン一個分の値段でした。しかし、戦後のGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の指導のもと、アメリカの公共図書館制度の理念が日本の図書館制度に取り入れられました。GHQの影響で、図書館は社会教育の場として誰もが自由に利用できるべきだという考えが強まり、利用料を取らない無料制が法制化されたのです。
この無料制の根底にあるのは「知の公共性」という思想です。すべての人が等しく情報を得られ、学べる環境が社会の発展には不可欠だからです。たとえば、子どもや高齢者、経済的に弱い立場の人々も図書館の恩恵を受けられることで、社会の格差を緩和し、多様な人々の生活の質を高めています。
さらに、ユネスコの公共図書館宣言でも、公共図書館は無料が原則とされ、地方自治体や国が責任を持って運営費をまかなうべきとされています。これは、図書館が単なる娯楽施設ではなく、教育や文化、情報提供の基盤インフラとして不可欠な存在であることを示しています。
今後、デジタル化や電子図書館の普及に伴い、この無料原則は新たな課題に直面しています。しかし、図書館が無料である意義は決して失われることなく、情報弱者支援や地域社会の知的インフラとしての役割はこれからも重要視され続けるでしょう。
図書館が無料であるのは、知識と文化をすべての人に平等に届け、より良い社会づくりを支えるための大切な原則だからです。
まとめ
この記事のまとめです。
- 公立図書館が無料であるのは、日本の「図書館法」により法的に保障された原則である。
- 無料原則はすべての国民が経済的な制約なく平等に知識や文化にアクセスできることを目指している。
- 戦前は閲覧料の徴収があったが、戦後の民主主義教育の普及とGHQの指導で無料制が導入された。
- 無料であることで、子どもや高齢者、経済的弱者も気軽に図書館を利用でき、社会の知的格差が緩和される。
- 図書館は公共の知的インフラとして社会教育や民主主義を支える重要な役割を担っている。
このように、図書館が無料であることは、知識の共有と社会の平等を促進するための根本的な仕組みとして不可欠です。
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