オチュンと学ぶ 水の状態変化と潜熱

ぬれた手に風が当たると、ひんやり。夏の空では、小さな雲がもくもくと育っていきます。ずいぶん違うできごとですが、どちらにも「水が姿を変えるときの熱」が関わっています。

その熱の名前が、潜熱(せんねつ)。水は氷・水・水蒸気へと姿を変えながら、熱も受け渡しています。オチュンと水のなかまたちと一緒に、身近な水から空のしくみへ出かけましょう。

海辺で水のなかまたちと空を観察するオチュン
図1 オチュンと、氷くん・水くん・水蒸気くん。キャラクターは水の姿を表すイメージです。水蒸気は本来、目には見えません。
目次

水の三つの姿を見分けよう

水には、私たちがよく出会う三つの姿があります。

  • 氷は固体。形が決まっています。雪の結晶も氷の仲間です。
  • 水は液体。流れて、入れ物に合わせて形が変わります。雨粒や雲の水滴も液体です。
  • 水蒸気は気体。空気中に広がり、目には見えません。

この三つの間で姿が変わることを、状態変化といいます。姿が変わっても、別の物質になるわけではありません。

ここで、空を見るときの大切なポイント。白い雲の中身は、小さな水滴や氷の粒です。 水蒸気そのものが白く見えているのではありません。やかんの上の白い「湯気」も、水蒸気が冷えてできた細かな水滴です。気体の水蒸気は、冬の冷たい空気の中にもあります。

オチュン

白く見える雲と、見えない水蒸気。ここを分けると、空の話がわかりやすくなるね!

潜熱は姿を変えるために出入りする熱

水に熱を加えると、普通は温度が上がります。こうした、温度の変化として表れる熱を顕熱(けんねつ)と呼びます。一方、状態変化のために吸収・放出される熱が潜熱です。

たとえば、ほぼ1気圧のもとで、純粋な氷と水が混ざったものをゆっくり温める場面を考えましょう。氷がとけている間、温度はほぼ0℃に保たれます。それでも、氷は熱を受け取り続けています。受け取った熱が、氷を水に変えるために使われているからです。

熱を受け取ったからといって、その分がすべて温度上昇になるわけではない。 これが潜熱を理解する入口です。潜熱の「潜」は、温度変化としては表れない、という意味だと考えると覚えやすいでしょう。

六つの状態変化と熱の向き

熱の向きは、姿を変える水を主役にして考えましょう。「受け取る」は水が熱を吸収すること、「渡す」は水が周りへ熱を放出することです。

表は横にスクロールできます。

変化の名前 何から何へ 熱の向き 身近な例や気象とのつながり
融解(ゆうかい) 氷 → 水 周りから受け取る 雪や氷がとける
蒸発(じょうはつ) 水 → 水蒸気 周りから受け取る 海面やぬれた地面から水が蒸発する
昇華(しょうか) 氷 → 水蒸気 周りから受け取る 雪や氷が、とけずに直接水蒸気になる
凝固(ぎょうこ) 水 → 氷 周りへ渡す 雲の中の水滴が凍る
凝結(ぎょうけつ) 水蒸気 → 水 周りへ渡す 雲粒や露ができる
凝華(ぎょうか) 水蒸気 → 氷 周りへ渡す 霜ができる、氷の結晶が成長する

蒸発は、100℃にならなくても起こります。洗濯物が常温で乾くのも蒸発です。沸騰も「水→水蒸気」への変化ですが、水の表面だけでなく内部にも水蒸気の泡ができる、という違いがあります。

氷が液体を経ずに直接水蒸気になる変化が昇華です。なお、気象分野の資料には、逆向きの「水蒸気→氷」も昇華と呼ぶものがあります。この記事では向きを分けるため、後者を凝華と表記します。

蒸発は周りから熱を受け取り 凝結は熱を渡す

ぬれた手が乾くとき、水は皮膚などから熱を受け取って蒸発します。熱を渡した皮膚は冷えるので、ひんやり感じます。汗による冷却も同じしくみで、汗が蒸発するときに体から熱を運び去ります。

反対に、水蒸気が液体の水になる凝結では、熱が周りへ渡されます。冷たいグラスの外側に水滴ができるときも、この向きです。グラスが冷たくても、凝結の際には熱が主にグラス側へ移ります。

蒸発では周りから水へ、凝結では水から周りへ熱が移ることを比べる図
図2 青い矢印は水の姿の変化、橙の矢印は熱の移動。蒸発と凝結は、熱の受け渡しも逆向きです。
オチュン

水が熱を受け取ったら、その熱を渡した相手は冷える。どちら側から見るかが大事なんだね!

海で受け取った熱が雲の中で放たれる

この熱の受け渡しを、海と空で追いかけてみましょう。

出発点は、海面での蒸発です。 水は海などから熱を受け取り、見えない水蒸気になります。水蒸気は風や空気の動きで運ばれます。蒸発は、熱を海から大気へ運ぶ道の一つです。

次に、水蒸気を含む空気が上昇します。 上空ほど気圧が低いので、上昇する空気は膨らんで冷えます。十分に冷えて飽和に達すると、水蒸気の一部が、空気中の小さな粒子を足場に水滴へ変わり始めます。この小さな水滴が雲粒です。

ここで起こる凝結によって、潜熱が周りの空気へ放たれます。 海面付近で蒸発のために受け取ったエネルギーが、水蒸気とともに運ばれ、雲のできる場所で大気へ渡されるのです。

海での蒸発、湿った空気の上昇と冷却、雲粒ができるときの潜熱放出を示す図
図3 海から空への水と熱の旅。①の橙の矢印は、海などから蒸発する水へ供給される熱を表します。大きな青い矢印は空気の上昇、雲の拡大図の橙の矢印は凝結による熱の放出です。

熱が出るのに空気は冷えるの

「上昇して冷える」と「凝結して熱が出る」は、同時に起こります。上昇して膨らむことは空気を冷やし、凝結による熱の放出は、その冷え方を一部打ち消します。

そのため、上昇する空気は、凝結がない場合に比べて冷え方がゆるやかになります。 雲の中で熱が放たれても、上へ行くほど必ず温度が高くなる、という意味ではありません。

周囲の空気より暖かい状態を保てれば、上昇が続きやすくなり、雲の成長を助けます。これが、積乱雲の発達で潜熱が大切な理由です。雲が大きく育つには、湿った空気に加えて、上昇のきっかけや周囲の気温の状態なども関わります。

雪や氷のでき方にも潜熱が関わる

冷たい雲の中では、水滴が凍ることがあります。水が氷になる凝固でも、潜熱は周りへ放たれます。

「冷えて凍るのに、熱が出るの?」と不思議に思いますね。水が凍るには、状態変化に伴う熱を外へ渡す必要があります。水が冷やされることと、水が周りへ熱を渡すことは、つながった話なのです。

反対に、氷や雪がとける融解では、周りから熱を受け取ります。飲み物の氷がとけるとき、飲み物が冷えるのも、飲み物から氷へ熱が移るためです。

水が凍るときの熱の放出と、氷がとけるときの熱の吸収を比べる図
図4 氷くんは固体の水を表すキャラクターです。実際の雲の中の氷は、さまざまな形の結晶や粒になっています。

雪の結晶は、水蒸気が直接氷に変わって成長します。この凝華でも潜熱が放たれます。雪が落ちる途中にとけて雨になる場合は、反対に熱を受け取ります。地上までとけずに届けば雪です。雨になるか雪になるかを考えるには、雲の中だけでなく、地面までの空気の状態も見る必要があります。

冬の朝に見かける霜も、水蒸気が直接氷になる例です。葉などの表面が十分に冷え、条件が整うと結晶がつきます。露としてできた液体の水が凍る場合は、凝固です。「氷がある」という見た目だけでなく、何から氷になったかを見分けましょう。

台風を支える熱と雨の下で空気を冷やす熱

台風では凝結の熱が大きな役割を果たす

暖かい海から供給された水蒸気が、台風の中で上昇し、雲粒になる。そのとき放たれる凝結の潜熱が、台風の上昇気流や循環を支えます。

海での蒸発と雲での凝結がつながることで、海のエネルギーが台風の発達に関わります。暖かい海に加え、湿った空気の流れや渦が育つ条件も必要です。

雨粒が蒸発すると空気を冷やす

一方、雲から落ちる雨粒が、地上に届く前に蒸発することもあります。特に雲の下が乾いていると、蒸発が進みやすくなります。

蒸発する水は周りの空気などから熱を受け取り、空気を冷やします。こうして冷えた空気は下降気流を強めることがあり、積乱雲から吹き下ろす突風に関わる要因の一つです。雨や氷の粒が空気を引き下ろす働きも関係します。

同じ水でも、凝結する場所では空気へ熱を渡し、蒸発する場所では空気から熱を受け取る。 雲の中と雲の下では、逆向きの働きが起こることがあるのです。

オチュンと三問でおさらい

第1問 白い雲は気体の水蒸気そのものでしょうか。

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いいえ。白く見える雲の中身は、小さな水滴や氷の粒です。気体の水蒸気は目に見えません。

第2問 雲の中で水滴が凍るとき、熱はどちらへ動くでしょう。

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凍る水から周りへ熱を渡します。水から氷への凝固は、潜熱を放出する変化です。

第3問 上昇する空気の中で凝結が起こると、空気の温度は必ず上がるでしょうか。

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必ず上がるわけではありません。上昇による冷却と凝結による熱の放出が同時に起こり、凝結がない場合に比べて冷え方がゆるやかになります。

オチュン

何から何へ変わった? 熱はどちらへ動いた? この二つをたどればいいんだね!

次に、グラスの水滴や空の雲を見つけたら、姿を変える水と、その相手へ動く熱を想像してみてください。水の小さな変化は、雨や雪、台風のしくみへとつながっています。

出典と参考資料

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この記事を書いた人

図書館でブログを書く、とある会社の副社長。

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