冷たいグラスの外側が、いつの間にかびしょびしょ。中の飲み物がもれたのでしょうか。じつは、その水滴は空気の中からやってきました。見えなかった水が、見える水になったのです。
水は、液体の「水」、固体の「氷」、気体の「水蒸気」という三つの姿をとります。姿が変わることを状態変化といいます。今日はオチュンといっしょに、キッチンに隠れた状態変化を探し、最後に同じしくみを空の雲まで追いかけます。合言葉は「変わる前は何? 変わった後は何?」です。
オチュンとキッチンの状態変化を探そう
まずは絵を見てください。水の状態変化を、基本の五か所から探しましょう。鍋やグラスだけでなく、キッチンの奥にも注目です。さらにもう一か所見つけられたら、あなたは観察名人。絵を指さしながら、「氷→水」のように、変わる前と後を声に出してみましょう。答えの絵は後半にあります。

白く見える湯気は、水蒸気そのものなのでしょうか。また、水滴が落ちたり、蛇口から水が流れたりすることは、水の姿が変わることなのでしょうか。見た目だけで決めず、「何から何へ」を考えてみてください。
こおり・みず・水蒸気 水の三つの姿
水道の水を冷凍庫に入れると、やがて氷になります。氷を常温におくと、今度は水に戻ります。やかんで水を熱すると、その一部は空気中へ出ていきます。
それでも、水が別の物質になったわけではありません。どの姿も「水」です。
三つの姿を並べると、こうなります。
- 氷(固体):形が決まっている。冷凍庫の氷や雪。
- 水(液体):入れ物に合わせて形が変わる。
- 水蒸気(気体):目には見えず、空気中に広がる。ぬれた布巾からも出ていく。
「見えない」と聞くと、水蒸気はないように感じるかもしれません。でも、洗濯物が乾いた後に水がどこかへ消えてなくなるわけではありません。水は水蒸気となって空気中に移っています。空気の中にも、水の仲間がいるのです。
水が空気へ出ていく二つの道
晴れた日にぬれた布巾を干しておくと、火を使わなくても乾きます。液体の水が、表面から少しずつ気体の水蒸気になるからです。この変化を蒸発といいます。蒸発は、沸騰するほど熱くなくても起こります。床をふいた後の水や、汗が乾くのも同じです。
では、鍋の水がぐつぐつしているときは? 鍋の中にたくさんの泡ができます。水が十分に熱せられ、液体の内部でも水蒸気の泡ができるのが沸騰です。蒸発も沸騰も、行き先は同じ「液体の水→気体の水蒸気」。ちがうのは、起こり方です。ぬれた布巾は表面から少しずつ、沸騰した鍋では水の中にも泡ができます。
ここで、ひとつ不思議なこと。鍋の上に見える白い「湯気」は、水蒸気そのものではありません。気体の水蒸気は透明で見えないのです。鍋から出た水蒸気が周囲の空気で冷やされ、細かい液体の水滴に戻ると、白く見えます。湯気は「水蒸気が目に見えた」のではなく、「水蒸気が水滴に変わった」しるしなのです。
蒸発や沸騰で水が水蒸気になるには、熱エネルギーが必要です。布巾の水は周りの空気や布巾などから、鍋の水は主にコンロから、熱を受け取ります。汗の水が皮膚などから熱を受け取って蒸発すると、体が涼しくなるのもこのためです。
見えない水蒸気が、水滴になって現れる
さっきの冷たいグラスに戻りましょう。グラスの外側についた水滴は、どこから来たのでしょう。グラスの中の水がガラスをすり抜けたのではありません。グラスのまわりにある空気中の水蒸気が、冷たい表面の近くで冷やされ、液体の水になったのです。
水蒸気(気体)→水(液体)。この変化を凝結といいます。お風呂の鏡が白く曇るのも、窓に水滴がつくのも、よく似たしくみです。鏡の曇りも小さな水滴です。指でなぞると跡ができるのは、その水滴が動くからです。
反対に、グラスの外側の水滴がつるりと下に落ちるだけなら、液体の水が液体のまま移動したことになります。「水滴ができた」は状態変化、「できた水滴が落ちた」は移動。見た目が続いた一つのできごとでも、分けて考えると、どこで変身したかがわかります。
凝結するとき、水蒸気は周囲へ熱を渡します。鍋から出た水蒸気が冷たいふたの裏で水滴になれば、ふたは熱を受け取ります。ただし、ふたが熱くなるのは凝結だけのせいではなく、熱い鍋などから伝わる熱もあります。熱にはいくつもの通り道があるのです。
氷ができるときと、氷がとけるとき
製氷皿を冷凍庫に入れると、水は氷になります。水(液体)→氷(固体)を凝固といいます。「冷やす」と聞くと、熱が消えてしまう気がするかもしれません。水が凍るとき、水は周りへ熱を渡します。冷凍庫はその熱を外へ運ぶのです。
反対に、飲み物に入れた氷がとける変化は、氷(固体)→水(液体)。これを融解といいます。氷は飲み物などから熱を受け取ってとけます。飲み物は熱を渡すので冷えます。氷が「冷たさ」を飲み物に渡すのではなく、飲み物から氷へ熱が移る、と考えるのがポイントです。
冷凍庫から出したばかりの氷は、まず温まってから、とけ始めることもあります。「氷の温度が上がること」と「氷が水へ変わること」は、続けて起きても別のできごとです。見つけたいのは後者、つまり姿が変わる瞬間です。
キッチンの答え合わせ
さあ、オチュンの見つけた基本の五か所を確認しましょう。同じグラスに、ちがう二つの変化が隠れています。おまけの六か所目まで見つけられたでしょうか。

- 鍋の水が沸騰する:液体の水→気体の水蒸気。
- グラスの中の氷がとける:固体の氷→液体の水。氷は飲み物から熱を受け取ります。
- グラスの外側に水滴がつく:空気中の水蒸気→液体の水。外側の水滴は、飲み物がもれたものではありません。
- 製氷皿の水が凍る:液体の水→固体の氷。水は熱を周囲へ渡します。
- ぬれた布巾が乾く:液体の水→気体の水蒸気。布巾から落ちる水滴そのものは、ただ移動しているだけ。状態変化なのは、布巾の水が蒸発するところです。
おまけの⑥ 白い湯気ができる:目に見えない水蒸気→細かな液体の水滴。鍋から出た水蒸気が周囲で冷やされ、凝結したのです。「白い湯気ができるのも状態変化だ」と見つけたなら正解です。
基本の五つもおまけの一つも、「水が何から何へ変わったか」です。
イラスト以外でもキッチンでは他にもいろいろな状態変化を発見できます。たとえば鍋のふたの裏で水滴を見つけたら、それは何から何への変化でしょう。答えは水蒸気から液体の水への凝結です。
キッチンの外にも、同じ変化がある
窓の外を見てみましょう。海や川、地面の水は蒸発して、目に見えない水蒸気になります。水蒸気を含む空気が上がって冷えると、水蒸気の一部が小さな水滴に変わります。雲には、その水滴や氷の粒が集まっています。だから、雲そのものを「水蒸気のかたまり」と呼ぶのは正しくありません。見える雲の中身は、液体の水滴や固体の氷の粒です。
雲の中で水滴や氷の粒が成長し、十分に大きくなると地面へ落ちてくるものもあります。氷の粒が途中でとけて雨になることもあります。ここでも言葉を分けましょう。雲の水滴ができることは、水蒸気から水への状態変化。雨粒が落ちることは、水が場所を移ることです。「雨が降る」という動き自体は状態変化ではありません。雪が地面でとけて水になるなら、それは融解です。
空で水蒸気が水滴になるときにも、凝結の熱が周りの空気へ放出されます。小さな水滴の話なのに、熱の受け渡しは雲の発達に関わります。キッチンで見つけた変化は、天気を読むための入口にもなるのです。
家で試せる二つの観察
一つ目は、冷たい飲み物を入れたグラスと、何も入れていないグラスを並べることです。しばらくすると、冷たいほうの外側に水滴がつきやすくなります。手で外側をさわる前に、まず目で比べてみてください。グラスのふちから飲み物が流れていなくても、側面に水滴が現れますか。色のついた飲み物なら、外側の水滴も同じ色でしょうか。もれていないグラスに水滴がつくことは、空気中の水蒸気が冷えた、と考えると説明できます。なお、空気が乾いていたり、グラスがあまり冷えていなかったりすると、水滴が目立たないこともあります。
二つ目は、ぬれた布巾と乾いた布巾を比べることです。ぬれた布巾を広げて置き、時間がたったら、さわった感じがどう変わったかを確かめます。ぬれた布巾の重さをはかれるなら、乾く前後で比べてもよいでしょう。水が布巾から空気へ出ていけば、布巾は軽くなります。ただし、たくさん水がしたたり落ちた場合、その分も軽くなります。「軽くなった分が全部蒸発した」と決めつけず、水滴が落ちたかも見ておくのが、観察のこつです。熱い鍋や冷凍庫の機械には触れず、この二つだけで十分に実験できます。
もしグラスの外側の水滴がしばらくして消えたら、凝結してできた水が、今度は蒸発した可能性があります。同じ場所でも、時間が変われば逆向きの変化が起こるのです。「一回見て終わり」ではなく、少し時間をあけてもう一度見ると、水の動きがもっと見えてきます。
変化と移動を見分ける三つの質問
身近な水を見つけたら、次の順番で考えてみましょう。
- 変わる前は? 氷、水、水蒸気のどれでしょう。
- 変わった後は? 前とちがう姿なら、状態変化です。
- ただ場所が変わっただけ? 水滴が落ちる、雨が降る、蛇口から水が流れる。これらは、姿が同じなら移動です。
もう一歩考えたい人は、「熱はどちらへ移った?」も加えてください。水が蒸発したり氷がとけたりするときは、状態変化のために熱を受け取ります。水蒸気が水滴になったり、水が凍ったりするときは、周囲へ熱を渡します。こうした状態変化に伴う熱を潜熱と呼びます。難しく感じたら、まずは「変身には熱のやり取りがある」と覚えれば十分です。
今日、冷たいグラスを手にしたとき、外側の水滴を見てください。それは空気中にあった見えない水蒸気の「足あと」です。布巾が乾く、氷がとける、窓が曇る。水の姿を追いかけるだけで、いつもの家が小さな気象観測所になります。
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