湖はなぜ水面から凍る? オチュンと学ぶ水の4℃

凍った湖を素足で滑るオチュン。右側に「湖はなぜ水面から凍る? オチュンと学ぶ水の4℃」と書かれている。

冬の朝、道ばたの水たまりに、ガラスみたいな薄い氷。公園の池をのぞくと、こちらも岸の近くにうっすら氷が張っています。オチュンは、しゃがんで水面をじっと見つめました。

冬の朝、公園の池の岸から、オチュンが水面に張った薄い氷をのぞき込む
冬の朝。岸に近いところには薄い氷、少し離れたところにはまだ水面が見えます。
オチュン
冷たい水は沈みそうなのに、どうして池の底じゃなくて、水面が先に凍るんだろう?

そのヒントは、台所にあるコップと、温度計の4℃にあります。

目次

コップの氷は、どこにいる?

冷たい飲みものに氷を入れると、氷は水面にぷかぷか。水面の上に少し顔を出して、下にはまだ飲みものがあります。氷は、同じ大きさの液体の水より軽いからです。

透明なコップの水面に氷が浮かび、オチュンが水面を指している
図1 コップの中では氷が浮き、その下に液体の水があります。
オチュン
氷が浮くのは、コップでも見られるね。でも池では、氷になる前の冷たい水はどこにいるの?

池や湖では、氷ができる前から、水の居場所が温度によって変わります。そこで、コップを3つ並べてみましょう。

0℃・4℃・10℃、同じ量ならどれが重い?

同じ大きさのコップに、0℃、4℃、10℃の真水を、どれも同じ高さまで入れたと想像してください。0℃のコップにも、液体の水だけが入っているとします。水だけを量ったら、どれがいちばん重いでしょう?

0℃、4℃、10℃の真水を同じ高さまで入れた3つの同じコップを、オチュンが見比べている
図2 水の体積をそろえて、温度だけ変えて比べます。

答えは、真ん中の4℃の水。同じ体積の中にどれだけの重さがあるかを表すのが、密度(みつど)です。真水の密度は、ふつうの気圧のもとでは約4℃でいちばん大きくなります。台所のはかりでは見分けにくいほどの小さな差ですが、湖ではこの差が水の動き方を変えます。

10℃の水を4℃くらいまで冷やすと、水は少し縮みます。ところが、4℃くらいから0℃に向かって冷やすと、今度は液体のまま少し膨らみ、密度が小さくなります。 約4℃が、水の変化の折り返し地点です。

秋は沈み、冬は上に残る

秋から冬にかけて、湖は空気に接する水面から熱を失います。水面がまだ4℃より暖かい間は、水が冷えると密度が大きくなります。下の水より密度が大きくなった水は沈み、下の水と混ざります。冷え込みが続くと、水面から深いところまで水温が近づいていきます。

水面の水が約4℃を下回ると、冷えるほど密度は小さくなります。下の約4℃の水より密度が小さいので、水面付近にとどまりやすくなります。そこからさらに熱が逃げると、水面で氷ができ始めます。

図3の右のように、湖面が凍っても、深い湖では氷の下に水が残ります。水に溶けた酸素が十分にあれば、魚は凍りつかず、湖底近くで冬を越せます。

秋と冬の湖の断面。左は冷えた水が沈む様子と泳ぐ魚。右はオチュンが氷の上を滑り、氷の下は0℃近くから約4℃まで水温が徐々に変わり、湖底近くを魚が泳いでいる。
図3 左:水面が約4℃より暖かい時期。冷えて密度が大きくなった水が沈みます。右:氷が張った湖の一例。氷のすぐ下の0℃近くから、深いところの約4℃まで、水温が徐々に変わります。
オチュン
最初は冷えた水が沈むけど、約4℃より冷たくなると、今度は上に残りやすいんだ!

北海道の摩周湖では、氷のすぐ下がほぼ0℃の時期でも、水深約212メートルの湖底は約4℃です。湖底の水温は湖ごとに違いますが、摩周湖は、冬に冷たい水が上に重なる様子を実際に観測できる例です。

最低気温が氷点下なら、翌朝は凍る?

天気予報で「明日の最低気温はマイナス1℃」と聞くと、池にも氷が張りそうな気がします。でも、予報の気温は空気の温度。昼の間に水が暖まっていたり、寒い時間が短かったりすると、水面の水は凍るところまで冷えないことがあります。氷ができるには、水が凍るときに出る熱も逃げていく必要があります。

窓辺でオチュンが、雪の印が続く観察ノートに目を向けている
図4 朝の最低気温に加えて、寒い日がどれくらい続いたかにも注目です。

道ばたの浅い水たまりと、たくさんの水をたたえた湖。同じ寒い朝でも、冷え方は違います。湖の深さや、前の日までに水がためた熱、風で水がどのくらい混ざるかも、凍り方に関わります。散歩で池を見かけたら、「今朝は何度だったかな」に加えて、「昨日の昼も寒かったかな」と思い出してみてください。

諏訪湖の氷は、昔の冬も教えてくれる

長野県の諏訪湖では、湖面が全面的に凍ったあと、氷の一部が筋のようにせり上がる御神渡り(おみわたり)が見られることがあります。諏訪湖の記録を調べた研究では、湖が凍る前日の日中も気温が低く、当日の朝も冷え込むことが、結氷(けっぴょう)に関わると示唆されています。

冬の諏訪湖をイメージした絵。凍った湖面に低い氷の筋がのび、オチュンが岸から観察している
図5 諏訪湖の御神渡りのイメージ。平らな氷の上に、せり上がった氷が筋をつくります。

諏訪湖では、いつ湖が凍ったかが昔から記録されてきました。その日付は、気象観測が始まる前の冬の寒さを知る手がかりにもなります。コップの氷から始まった疑問が、昔の冬の天気にまでつながっているんですね。

オチュンの確認クイズ

これだと思う選択肢を押してみよう。正誤と解説が開くよ!

第1問 同じ体積でいちばん重い水は?

A.0℃の水

× もう一度! 0℃の水は、同じ体積の約4℃の水より少し軽くなります。

B.約4℃の水

○ 正解! 真水は約4℃で密度が最大になります。同じ体積なら、このときがいちばん重くなります。

C.10℃の水

× もう一度! 10℃の水は、同じ体積の約4℃の水より少し軽くなります。

第2問 湖の水面が1℃、その下が約4℃。1℃の水はどこに残りやすい?

A.水面付近

○ 正解! 1℃の水は約4℃の水より密度が小さいので、風などで強く混ざらなければ上に残りやすくなります。

B.湖の底

× もう一度! 1℃の水は約4℃の水より密度が小さいので、湖の底へは沈みにくいです。

C.約4℃の水と同じ深さ

× もう一度! 風などで強く混ざらなければ、密度の小さい1℃の水は約4℃の水より上に残りやすくなります。

第3問 明日の最低気温は−1℃。池には必ず氷が張る?

A.必ず張る

× もう一度! 予報の−1℃は空気の温度です。水面が凍る温度まで下がらないこともあります。

B.絶対に張らない

× もう一度! 水面が十分に冷えれば、氷が張ることもあります。

C.水の冷え方による

○ 正解! 予報の最低気温だけでは決まりません。水が前の日までにためた熱や、寒さが続く時間も関係します。

出典と参考資料

  1. 米国地質調査所(USGS)「Water Density」:水温と密度の関係、氷が浮く理由。
  2. 国立環境研究所「摩周湖の湖底へ」:摩周湖で観測された水温と、季節ごとの水の混ざり方。
  3. 国土交通省「河川砂防技術基準 調査編 第13章第2節 湖沼・ダム貯水池の物理環境調査」:湖沼の熱の出入り、水温と密度、水の混ざり方。
  4. 米国五大湖地域の気候研究機関(GLISA)「Lake Ice Overview」:湖の深さや蓄えた熱、風などと結氷の関係。
  5. イリノイ大学「Ice Forms On The Surface」:湖面に氷ができる仕組みと、凍るときに出る熱。
  6. 三上岳彦ほか「諏訪湖の結氷・御神渡り発生と気象条件の関係」:諏訪湖の結氷記録と、前日の日中や当日朝の気温との関係。
  7. 米国ウィスコンシン州天然資源局「Managing Wisconsin Fishponds」:氷の下で魚が冬を越すために必要な、水に溶けた酸素について。

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この記事を書いた人

オチュン社長の付き人

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