別の鳥にヒナを育ててもらう「托卵」のひみつ
「カッコウ、カッコウ」という鳴き声でおなじみのカッコウ。自分で巣を作ってヒナを育てるかわりに、別の鳥の巣に卵を産み、その鳥にヒナを育ててもらうことがあります。
この子育ての方法を**托卵(たくらん)といいます。卵を預けられた鳥は仮親(かりおや)**と呼ばれ、カッコウの卵をあたため、かえったヒナにえさを運びます。
今回は、托卵をする鳥としてよく知られるカッコウの行動を中心に見ていきましょう。
どうやって、別の鳥の巣に卵を産むの?
カッコウのメスは、卵を産み育ててもらう鳥の巣を見つけると、すきを見て卵を産みます。そのとき、巣にあった卵を一つ取り除くこともあります。ただし、いつも必ず取り除くわけではありません。研究論文
日本の川辺では、カッコウがオオヨシキリの巣に卵を産むことがあります。オオヨシキリはヨシ原に巣を作り、「ギョギョシ、ギョギョシ」と大きな声で鳴く鳥です。カッコウとオオヨシキリの托卵について
仮親の卵に似せた「そっくり作戦」
カッコウの卵は、仮親となる鳥の卵に色や模様が似ていることがあります。卵が似ていれば、仮親に「見知らぬ卵だ」と気づかれにくくなると考えられています。
ただし、どのカッコウの卵も、どんな鳥の卵にもそっくりというわけではありません。カッコウのメスには、特定の種類の鳥の巣を主な相手にするものがいて、その相手の卵に似た卵を産む例が知られています。卵の色や模様の似かたには、相手の鳥の種類などによって違いがあります。カッコウの卵の色や模様についての研究
仮親の側も、ただだまされているばかりではありません。自分の卵と違う卵に気づいて、巣の外へ出す鳥もいます。仮親が見分ける力を高めれば、カッコウ側にはさらに卵を似せることが有利になります。鳥たちの間では、長い時間をかけた「見破る力」と「見破られない工夫」のせめぎ合いが続いています。
生まれたばかりのヒナが、卵を背中で押し出す
カッコウのヒナは、仮親のヒナより先にかえることがあります。カッコウ(Cuculus canorus)のヒナは、孵化直後は目が見えず、羽毛もほとんどありません。それでも、背中のくぼみに卵を乗せ、巣の縁まで押し上げて外へ落とす行動が観察されています。巣の中に仮親のヒナがいる場合、それを押し出すこともあります。研究論文
ほかの卵やヒナが巣からいなくなると、カッコウのヒナは仮親からえさをもらいやすくなります。生まれたばかりの小さなヒナが背中を使って卵を押し出すとは、驚きの行動ですね。
なお、この行動は、カッコウの仲間ならどの種類でもするというわけではありません。托卵する鳥の種類によって、子育ての方法は異なります。
仮親は、自分より大きくなるヒナにもえさを運ぶ
仮親は、巣に残ったカッコウのヒナにえさを運びます。ヒナが育つと、体の大きさが仮親を上回ることもあります。それでも仮親は、口を大きく開けてえさをねだるヒナに、せっせと食べものを運びます。
小さな鳥が自分より大きなヒナにえさを運ぶ姿は、なんとも不思議です。仮親がヒナを自分の子だと思って育てているのか、見分けられないのかは、鳥の種類や状況によって異なります。托卵された卵に気づいて巣から出したり、巣を離れたりする鳥もいます。托卵する鳥と仮親の関係についての研究総説
鳥の子育ては、巣を作るだけじゃない
托卵は、鳥の世界にある子育ての方法の一つです。卵を預けるカッコウと、卵を見分けようとする仮親。それぞれの特徴が長い時間をかけて変化してきたことを知ると、ヨシ原に隠れた巣の見え方も変わってきます。
次に「カッコウ、カッコウ」という声を聞いたら、近くでオオヨシキリが子育てをしていないか、そっと想像してみてください。小さな巣の中では、意外な物語が始まっているかもしれません。

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