世界でたった一機だけが飛んだ An-225ムリーヤの特徴と歴史

左右に3基ずつのジェットエンジンと、胴体の最後尾に2枚の垂直尾翼を持つAn-225ムリーヤを、展望デッキのオチュンが見上げる水彩と色鉛筆風のイラスト。
6つのエンジンが並ぶ姿は、一度見ると忘れられない。運航していたころのAn-225を描いたイメージです。

飛行機の翼の下に、丸いエンジンがずらり。

右に3つ、左にも3つ。後ろを見ると、しっぽの縦の板まで左右に分かれている。

「えっ、こんな飛行機、本当に飛んでいたの?」

そんな驚きをくれるのが、An-225ムリーヤです。途方もなく大きな荷物を運ぶために生まれ、完成して空を飛んだのは世界に1機だけ。名前の「ムリーヤ」は、ウクライナ語で「夢」を意味します。

覚える入口は、ジェットエンジン6基と、左右に分かれた2枚の尾翼。そこから大きさと歩んだ時代を知ると、この姿にちゃんと理由があることが見えてきます。

なお、その1機は2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻の際に破壊されました。この記事では、空を飛んでいたころの特徴と歴史、再建への構想を紹介します。

機種の名前を知らなくても大丈夫。まずは一緒に、エンジンを数えてみよう!

目次

世界最大とはどのくらい大きいのか

An-225は、当時のソ連で、現在のウクライナにあるアントノフが開発した超大型輸送機です。旅客機のように大勢のお客さんを乗せるためではなく、大きく重い貨物を運ぶために造られました。

全長は84m。25mプールを縦に3つ並べても、まだ9m足りません。翼の端から反対側の端までは88.4mあり、長い胴体より、左右に広げた翼のほうがさらに大きいのです。

B737-800、A350-900、B747-400、A380-800、An-225ムリーヤを横から見た全長比較の概略イラスト。全長は順に39.5m、66.8m、70.7m、72.7m、84.0m。
身近な旅客機と、An-225の横顔・全長を比べてみましょう。数値は図に示した型式のものです。機体の描写は外観と大きさの目安を示す概略図です。

ここで「世界最大」の意味を、ひとつ押さえておきましょう。

An-225は、最大離陸重量640トンという、重さの世界記録を持つ飛行機です。これは荷物だけの重さではありません。飛行機そのもの、燃料、貨物などを合わせた、離陸時の総重量の上限です。

一方、翼の幅で世界最大なのは、翼幅約117mのストラトローンチ「Roc」という別の飛行機。「大きさ」にもいくつかの物差しがあると知っておくと、An-225のすごさをより正確に楽しめます。

『いちばん大きい』にも、重さや翼の幅があるんだね。ムリーヤは、重さで記録を持つ巨人なんだ!

写真で見分けるならエンジンと尾翼に注目

翼の下に3つずつ並ぶジェットエンジン

いちばんわかりやすい目印は、左右の翼に3基ずつ、合計6基のエンジンです。大きな丸い吸い込み口が横一列に並ぶ正面の姿は、An-225ならではの迫力があります。エンジンは「D-18T」という種類のターボファン。ここでは「大型ジェット機に使われるタイプ」と思えば十分です。

写真を見つけたら、まず翼の下を数えてみてください。斜めや真横からでは反対側のエンジンが隠れるので、正面寄りの写真が見分けやすいです。

しっぽの縦の板が左右に2枚

次は、後ろのしっぽ。「垂直尾翼」と呼ばれる縦の板が、左右に1枚ずつ立っています。横に伸びる尾翼の両端に立つので、後ろから見ると、真ん中が開いた形になります。

この形は、背中に宇宙船などの大きな荷物を載せて飛ぶことを考えて選ばれました。大きな荷物があると、その後ろの空気の流れが変わります。そこで縦の尾翼を左右へ分けたのです。変わった形に見えて、仕事に合わせた工夫でした。

足元にはずらりと32個の車輪

地上の写真なら、足元も見どころです。An-225の車輪は、前脚も含めて全部で32個。巨大な体を支える足が、胴体の下にずらりと並びます。後ろ側の主脚には、地上で向きを変えるために車輪の向きが変わる仕組みもありました。

最初から車輪を全部数える必要はありません。アントノフの大きな輸送機を見たら、6つのジェットエンジンと2枚の垂直尾翼をセットで探す。これだけでも、写真を見る楽しみがぐっと増えます。

スペックを身近な感覚で眺めてみよう

表は左右に動かして読めます →

項目 An-225の主な数値 初めて見る人向けの読み方
全長 84m 鼻先からしっぽまで。25mプール3つ分より長い
翼幅 88.4m 左右の翼の端から端。胴体の長さより広い
全高 18.2m 地面からいちばん高いところまで
最大貨物重量 250トン 運ぶ荷物の重さの上限
最大離陸重量 640トン 機体・燃料・貨物などを合計した重さの上限
エンジン D-18T × 6基 左右の翼に3基ずつ
貨物室 長さ約43.3m × 幅6.4m × 高さ4.4m 飛行機の中に、長い大きな部屋がある
航続距離の一例 貨物200トンで約4,000km 積む重さなどの条件によって飛べる距離が変わる

数値は運航当時の代表値です。

250トンがどれほど重いか想像しにくければ、1台1.5トンの車を思い浮かべてみてください。重さだけなら約167台分に相当します。実際にそれだけの台数が機内に入る、という意味ではありません。

また、「250トンの荷物を積める」と「640トンで離陸できる」は別の話です。引っ越しのトラックで考えると、前者は荷台に載せる荷物、後者はトラック自体や燃料まで含めた全体の重さに当たります。

たくさん積むほど、燃料との兼ね合いが大切になる。 飛べる距離は貨物や運航条件で変わるため、最大の荷物と最長の航続距離を、同時に実現できるとは限りません。

250トンは荷物、640トンはぜんぶ合わせた重さ。分けて考えると、数字が読めるようになるね。

アントノフの仲間をイラストで比べよう

アントノフの主な輸送機3機の比較。An-22は4発プロペラと2枚の垂直尾翼、An-124は4発ジェットと1枚の垂直尾翼、An-225は6発ジェットと2枚の垂直尾翼。各機のエンジンと尾翼の拡大図を添えている。
見分ける順番は「プロペラかジェットか」「エンジンの数」「縦の尾翼の枚数」。形の比較用イラストで、縮尺は統一していません。

An-225には、同じアントノフが手がけた輸送機の仲間がいます。ここでは、外見と役割の違いが楽しい3機を並べました。同じ機種のサイズ違いではなく、それぞれ別の機種です。

表は左右に動かして読めます →

機種 見分ける目印 全長 貨物重量の比較値 どんな立ち位置か
An-22 アンテーイ プロペラ4発・垂直尾翼2枚 約57.8m 60トン〔商用仕様〕 巨大なプロペラ輸送機
An-124 ルスラーン ジェット4発・垂直尾翼1枚 約69.1m 標準120トン・改修仕様150トン 超大型貨物を運ぶ量産輸送機
An-225 ムリーヤ ジェット6発・垂直尾翼2枚 84m 250トン 宇宙輸送のために生まれた特別な1機

貨物重量は各仕様の比較値で、すべての機体・航路に共通する値ではありません。

An-22のプロペラは、1つのエンジンの前で、前後2組が逆向きに回る「二重反転」という仕組みです。羽根がたくさん見えても、エンジンそのものは4基。見た目から仕組みが気になってくる、おもしろい飛行機です。

An-124は、An-225を見分けるときのいちばんの比較相手。大きな鼻先や、胴体の上のほうから伸びる翼はよく似ています。それもそのはず、An-225はAn-124を設計の土台にして生まれました。多くの仕組みを受け継ぎながら、エンジンを増やし、尾翼の形も仕事に合わせて変えています。

「大きなアントノフを見た」という話でも、4発ジェットで縦の尾翼が1枚ならAn-124。6発ジェットで左右に尾翼が分かれていたらAn-225。写真の印象が似ていても、この違いを探すと見分けやすくなります。

名前の数字を丸暗記するより、まずは形! 4つと6つ、しっぽ1枚と2枚。見比べると個性があるね。

宇宙船を背中に載せるために生まれた

1980年代末の姿をイメージしたAn-225と、背中の支柱に載った宇宙往還機ブラン。白と赤の輸送機の上に黒と白の小さな宇宙機が同じ向きで載っている。
An-225とブランの組み合わせを描いた歴史イメージ。背中の宇宙機を運ぶ姿で、この飛行機を覚えた人もいるでしょう。

なぜ、ここまで大きな飛行機が必要だったのでしょうか。

出発点は、ソ連の宇宙開発でした。An-225は、宇宙往還機「ブラン」と、大型ロケット「エネルギア」の部品を運ぶために開発されました。宇宙往還機とは、宇宙へ行き、地上へ帰ってくることを想定した宇宙船です。

大きな宇宙船を、飛行機の背中に載せて運ぶ。写真を見ると一瞬、飛行機の親子のようにも見えます。でも、下の大きな機体は輸送機、上の小さな機体は宇宙へ行くためのもの。役割の違う2機が、一緒になって空を移動しているのです。

An-225が初めて飛んだのは、1988年12月21日。1989年にはブランを背負ってパリ航空ショーへ姿を見せ、その組み合わせを世界に披露しました。

6つのエンジンも、左右に分かれた尾翼も、巨大な胴体も。ひとつひとつの特徴が、「とてつもなく大きなものを運びたい」という目的につながっています。

大きな飛行機が、小さな宇宙船を背負っている! 写真の中に、宇宙への道が見えてくるね。

宇宙の仕事から世界の大きな荷物へ

An-225は、その後、商業貨物の輸送でも力を発揮しました。長い休止期間を経て整備され、2001年5月7日に再び飛行。巨大な荷物を必要な場所へ届ける飛行機として、その力を生かしていきます。

たとえば2004年には、パイプを敷くための作業車4台、合わせて247トンを輸送。2010年には、1枚42.1mもある風力発電機の羽根を2枚運びました。

こうした荷物は、ただ小分けにすればよいとは限りません。大きな機械の形を保ったまま、遠くへ届けたい。そんな場面で、広い貨物室と大きな積載能力が役立ちました。

飛行機の役割をざっくり分けるなら、旅客機は人の移動を支え、一般的な貨物機は多くの荷物を運びます。An-225が得意だったのは、その中でも特別に大きい、重い、長い荷物でした。

「世界で一番大きい」という言葉の先に、運びたいものと、それを待つ人たちがいる。そう考えると、翼の下に並ぶエンジンが、少し頼もしく見えてきませんか。

完成して飛んだ1機と再建への夢

An-225は2機の製造が始まりましたが、完成して飛んだのは1機だけです。2号機は未完成のまま残りました。

その唯一の飛行機は、2022年2月、ウクライナのホストメリ空港で、ロシアによる侵攻の中で破壊されました。映像や写真の中に残る堂々とした姿を思うと、失われたものの大きさを感じます。

一方で、再び飛ばしたいという構想もあります。残された機体の部品や未完成の2号機を使う案が示され、Microsoft Flight SimulatorのAn-225追加コンテンツを通じた再建支援も行われました。

2024年9月には、残存部品の調査と保全を行い、戦争終結後に再建作業を再開する方針だと報じられています。再建の構想と、実際に再び空を飛ぶことには、まだ隔たりがあります。 2026年11月3日の確認時点では、完成・再飛行を示す公式発表は確認できていません。

だから、写真を眺めるときは「今どこの空港に行けば会えるかな」ではなく、「こんな仕事をした飛行機がいたんだ」と、その姿と歩みに出会ってみてください。

ムリーヤという名前の意味は、夢。

宇宙船を背負う姿も、6つのエンジンで大きな荷物を運ぶ姿も、「こんなものまで飛行機で運べるんだ」という驚きを残してくれます。

次に写真や映像で、アントノフの大きな輸送機を見つけたら、ぜひ翼の下としっぽを見てみてください。左右に3つずつ並ぶジェットエンジンと、2枚に分かれた垂直尾翼。今日出会ったムリーヤの目印です。

最初は『大きいなあ』だけでもいいんだね。形の理由を知ると、その飛行機の物語まで好きになれそう。

最後に写真を見るときの小さなクイズ

大きな白いアントノフの輸送機。ジェットエンジンは4基で、縦の尾翼は中央に1枚。An-124とAn-225のどちらでしょう。

答えと見分けるポイントを見る

答えはAn-124ルスラーンです。 An-225ムリーヤなら、ジェットエンジンは左右に3基ずつの6基、垂直尾翼は左右に分かれた2枚です。大きさの印象だけで迷ったら、エンジンとしっぽを見てみましょう。

参考資料

全長比較図の寸法資料は2026年11月4日に確認。

資料確認日:2026年11月3日。イラストは特徴や歴史を伝えるために作成したもので、実機写真や精密な設計図ではありません。オチュンは提供されたキャラクター素材をもとに使用しています。

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この記事を書いた人

オチュン社長の付き人

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