慣れたころが一番あぶないソラモン『ナレダルマ』

空港近くの雪の丘に、まるくて小さな雪だるまのソラモンがいます。名前はナレダルマ。青い帽子をちょこんとかぶり、雪の結晶模様のマフラーを巻いた、ころんとかわいいソラモンです。半目のようなやさしい顔で、いつも静かに雪道を見守っています。

ナレダルマの役目は、空港近くの丘にある雪道を守ることです。その丘には、雪玉が転がり落ちないようにするための「雪止め」が並べられています。雪止めとは、坂道をころころ転がる雪玉を止めるための小さな雪のブロック。ひとつひとつは小さく見えますが、空港を守るためにはとても大切なものです。

目次

油断で大きな失敗をした過去をもつソラモン『ナレダルマ』登場!

ナレダルマは、もともとはとてもまじめなソラモンでした。毎日、雪の坂に雪止めを置き、ひとつずつ確認していました。

「ここもよし」
「この雪止めもよし」
「最後まで、ていねいに」

そんなふうに、何度も何度も確認していたのです。

ところが、同じ作業を毎日くり返しているうちに、ナレダルマの心に少しずつ油断が生まれました。

「もう何回もやっているから大丈夫」
「いつもの場所だから平気」
「最後のひとつくらい、置かなくても変わらないかも」

そう思ったナレダルマは、ある日、最後の雪止めを置かずに丘を離れてしまいました。

その夜、雪の丘に風が吹きました。小さな雪玉が少しだけ動き、ころん、と坂を下りはじめます。最初は小さかった雪玉も、坂を転がるうちに雪を巻き込み、どんどん大きくなっていきました。

本当なら、最後の雪止めがそこで雪玉を止めるはずでした。けれど、その日はそこに雪止めがありません。

雪玉は止まらず、丘を下り、空港のほうへ転がっていきました。そして、滑走路の近くの灯りや雪道を壊してしまったのです。空港は大きな被害を受け、ナレダルマは自分の油断で起きた事態の大きさを知りました。

「慣れ」は力にもなるけれど

慣れることは悪いことではありません。何度もくり返すことで、作業は早くなります。道具の使い方も上手になります。どこに何を置けばよいかも、自然とわかるようになります。

でも、慣れにはこわい面もあります。

最初は緊張していたことも、何度もやっているうちに「いつも通り」と思うようになります。確認していたことを確認しなくなり、最後に見直していたことを省いてしまう。その小さな省略が、大きな失敗につながることがあります。

ナレダルマが忘れたのは、たったひとつの雪止めでした。けれど、そのひとつが空港を守る最後の壁だったのです。

ナレダルマが大切にしていること

それからのナレダルマは、どんなに慣れた作業でも、最後のひと手間を何より大切にするようになりました。

雪止めを置いたあと、少し離れて見ます。まっすぐ置けているか、すき間はないか、雪玉が転がってきても止められるか。ひとつずつ、ていねいに確かめます。

ときどき、まわりのソラモンに言われることもあります。

「ナレダルマ、もう大丈夫だよ」
「そんなに確認しなくてもいいんじゃない?」

でもナレダルマは、小さなへ字口のまま、静かに首をふります。

「さいごの雪止めも、ていねいに」

それが、ナレダルマの合言葉です。

かわいいけれど、教えてくれることは重い

ナレダルマは、見た目はとてもかわいいソラモンです。ふわふわの雪の体、青い帽子、長いマフラー。ころんとした姿は、見ているだけでやさしい気持ちになります。

けれど、ナレダルマが教えてくれることは、とても大切です。

「あと少しだから大丈夫」
「いつも平気だから大丈夫」
「慣れているから大丈夫」

そう思ったときほど、いちばん危ないのかもしれません。

小さな確認。最後のひと手間。いつも通りの作業を、いつも通りに終わらせること。それは地味だけれど、大切なものを守る力になります。

ナレダルマは今日も、空港近くの丘の上で雪道を見守っています。雪がしんしんと降る中、丸い体をゆらしながら、最後の雪止めをきちんと置きます。

もう二度と、大切な空港を傷つけないために。

慣れたころが一番あぶない。
ナレダルマは、そのことを静かに伝えてくれるソラモンなのです。

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この記事を書いた人

図書館で勝手に仕事をしている小さな会社のドケチ社長。口癖は「コーヒーの一滴は血の一滴」

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