霜のでき方と百人一首の夜更け

寒い朝、草や落ち葉が、白いお砂糖をまぶしたようになっていることがあります。近づいて見ると、キラキラした小さな氷がいっぱい。これが霜(しも)です。

「霜が降りた」と言うけれど、霜はどこから降ってきたのでしょう。じつは、空気の中の見えない水蒸気が、冷えた葉などの表面で直接、氷になるのです。

オチュンといっしょに、夜の庭をのぞいてみましょう。後半では、百人一首の「かささぎの」の歌を、天気のしくみから味わいます。

朝の庭で、両翼を体に沿わせたオチュンが霜の葉をのぞきこみ、左に拡大した氷の結晶が見えるイラスト
図1 朝の草や葉に見つかる霜。虫めがねで見ると、白い粉のように見えたものにも、細かな形があります。

① 霜は葉の上で育つ小さな氷

空気の中には、水蒸気(すいじょうき)がふくまれています。水蒸気は、水が気体になったもの。目には見えません。青い空の日も、透明に見える空気の中にあります。

夜のあいだに葉の表面が0℃より低くなり、水蒸気が氷としてくっつく条件がそろうと、小さな氷の結晶ができます。結晶は、形の整った氷のつぶのこと。そこに水蒸気がさらに加わると、針や羽のような形に育つことがあります。

空気中の見えない水蒸気、0℃より低く冷えた葉、葉の上で直接育つ氷の結晶を順番に示す図
図2 水蒸気から直接、氷の結晶ができるのが霜です。図の点は、目に見えない水蒸気を説明するための記号。結晶も見やすい大きさに広げて描いています。

大切なのは、水蒸気 → 氷という順番です。いったん水のしずくになってから凍るわけではありません。先にできた露(つゆ)が凍ることもありますが、それは、ここで説明している霜とはでき方がちがいます。

雪と霜も、できる場所がちがいます。雪は、雲の中で育った氷が空から落ちてきます。霜は、地上の葉や木の板などの表面で育ちます。「霜が降りる」は、昔から使われている言い方なのですね。

② 夜の地面は熱を出して冷える

では、葉や地面は、なぜ夜になると冷えるのでしょう。

地面や葉は、いつも赤外線(せきがいせん)という、目に見えない光を出して、熱を外へ送っています。昼は太陽の光であたためられますが、日がしずむと、そのあたためがなくなります。

地面が受け取る熱より、出ていく熱のほうが多くなると、地面の温度が下がります。こうして、赤外線を出して冷えることを放射冷却(ほうしゃれいきゃく)といいます。

晴れた夜は上向きの熱の矢印と多い霜、くもりの夜は雲から届く熱の矢印と少ない霜を示す比較図
図3 晴れた夜は、雲が多い夜より地面が冷えやすくなります。くもり側は冷えにくいようすを、霜を少なくして表しています。赤い矢印は、赤外線による熱のやり取りの模式図です。晴れた空から地面へ届く赤外線もありますが、図では省略しています。

雲や空気も、地面に向かって赤外線を出しています。雲が多い夜は、雲から届く熱が、まるで大きな布団のように地面の冷えこみを弱めます。晴れた夜は、その熱が少なくなり、地面や葉が冷えやすいのです。

見上げた夜空に星がくっきり見えるなら、雲が少ないのかもしれません。星や月が冷たさを送っているのではなく、雲の少ない空の下で、地面が熱を失いやすくなっているのです。

③ 霜ができやすい夜の3つの条件

霜を見つけやすいのは、寒さに加えて、次の条件がそろう夜です。

晴れ、弱い風、水蒸気という霜ができやすい夜の条件を、3枚の絵で説明する図
図4 晴れ・弱い風・氷の材料になる水蒸気。これらがそろい、表面が十分に冷えると、霜ができやすくなります。

① 晴れていること。 雲から受け取る熱が少なく、地面や葉が冷えやすくなります。

② 風が弱いこと。 地面の近くで冷えた空気が、上のほうの暖かい空気と混ざりにくくなります。冷たい空気が、地面の近くにとどまりやすいのです。

③ 材料になる水蒸気があること。 氷の材料は、空気中の水蒸気です。とても冷えても、水蒸気が少なすぎると、白い霜が育たないことがあります。

「寒ければ必ず霜」というわけではありません。表面の温度と、水蒸気の量の組み合わせが大切なのです。

④ 気温が3℃でも霜ができることがある

「氷ができるなら、天気予報の気温も0℃より低いはず」と思いませんか。

じつは、天気予報で見る気温は、葉の温度ではありません。気温は空気の温度で、日本の気象観測では、地面から約1.5mの高さで測ります。

晴れて風が弱い夜には、葉や地面の表面が、その高さの空気より冷たくなることがあります。たとえば、空気は3℃でも、葉の表面は−1℃ということがあるのです。

地上約1.5mの空気は3℃、霜のついた葉の表面はマイナス1℃という説明用の例を示す図
図5 空気の温度と、葉の表面の温度は同じとはかぎりません。3℃と−1℃は説明のための例で、いつも4℃の差になるわけではありません。

だから、気温がプラスでも、葉の表面で氷ができる条件がそろえば、霜は育ちます。霜のひみつを考えるときは、空気だけでなく、霜がついている物の温度にも注目しましょう。

⑤ 百人一首に出てくる白い霜

霜の白さを見て、夜が深まったことを感じる歌があります。百人一首の6番、中納言家持(ちゅうなごんやかもち)の歌として伝わる一首です。

かささぎの 渡せる橋に
おく霜の 白きを見れば
夜ぞ更けにける

最後は「よぞ ふけにける」と読みます。「更ける」は、夜が進んで遅い時間になること。「おく霜」は、物の上にできている霜のことです。

やさしく言いかえると、こんな気持ちでしょう。

かささぎがかけたという橋。その霜の白さを見ていると、ああ、夜もずいぶん深くなったのだなあ。

かささぎは、白と黒の羽をもつ鳥です。七夕の伝説には、かささぎたちが天の川に橋をかけるお話があります。この歌は七夕の歌ではなく、『新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)』では冬の歌に入っています。

霜のついた宮中の屋外の階段と、伝説の橋のイメージの中を飛ぶ3羽のカササギ、歌の札を持つオチュン
図6 宮中の階段にできた霜を見る、という読み方から想像した場面です。空に描いたかささぎの橋は、伝説のイメージです。

この歌には、冬の星の白いかがやきを霜に見立て、天の川の橋を思う読み方と、宮中の階段を、伝説の橋にたとえる読み方があります。宮中とは、天皇のお住まいなどがある場所です。

ここでは、階段にできた霜を見る読み方から、夜の冷えこみを考えてみましょう。

⑥ 白い霜から夜更けを感じる理由

日がしずんですぐの階段には、昼の暖かさがまだ残っているかもしれません。それから、晴れて風が弱い夜が続くと、階段や手すりは少しずつ熱を失っていきます。

表面が十分に冷えると、空気中の水蒸気から氷の結晶ができます。そのあとも条件が続けば、結晶が育ち、白い霜が目立つようになります。

夕方、夜更け、明け方の順に、木の板と葉が冷えて霜が育つ様子を示す3場面の図
図7 晴れて風が弱い夜の一例です。霜ができ始める時刻は、もともとの寒さ、水蒸気の量、風や雲の変化などでちがいます。

晴れておだやかな夜には、冷えこみが朝まで続き、日の出の前後に、その日いちばん低い気温になることがよくあります。真夜中を過ぎても、まだ冷えていくことがあるのですね。

このしくみを重ねて読むと、歌の白い霜は、夜のあいだに冷えこみが進んだことを感じさせる手がかりになります。

「こんなに白い霜ができるほど、冷えこんだんだ。夜もずいぶん進んだのだなあ」。そう想像すると、「夜ぞ更けにける」の実感が、ぐっと身近になりませんか。

ただし、霜だけで夜中の何時かはわかりません。とても寒い日は夕方からできることもあり、霜の白さには水蒸気の量なども関係します。この歌を「霜があるから必ず深夜だ」という天気の法則にすることはできません。

それでも、白い霜から、静かな時間の流れと冷えこんだ夜を感じることはできます。目に見える霜と、目には見えない夜の冷却が、この一首の中でつながっているのです。

⑦ 朝の霜をオチュンと観察しよう

晴れて冷えた朝に、家の庭や安全な公園で、草や落ち葉を見てみましょう。日が当たると霜はとけていくので、朝の早い時間が見つけるチャンスです。

  1. 形を見る。 白い粉のように見えますか。針や羽のような形はありますか。虫めがねがあれば、そっと近づけてみましょう。
  2. 場所をくらべる。 空がよく見える場所と、屋根の下。日が当たり始めた場所と、まだ日かげの場所。同じ庭でも、霜のつき方にちがいはあるでしょうか。
  3. 前の夜を思い出す。 晴れていましたか。風は強かったですか。気づいたことを、霜の絵といっしょに書いてみましょう。

冷えた朝の道はすべることがあります。道路や人の庭には入らず、暖かい服で観察してください。夜に起きて待っていなくても、朝の霜から、夜の冷えこみを想像できます。

⑧ 霜のひみつを確かめる3問

答えをクリックすると、結果とヒントが出るよ。何度でも選び直せます。くわしい説明は「答えを見る」で開いてね。

第1問 霜は雪のように空から降ってくる

もう一度考えてみよう。 雪と霜では、氷ができる場所がちがいます。もう一方の答えも選んでみよう。

正解! 霜は、冷えた葉などの表面で、水蒸気から直接育つ氷です。

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いいえ。 霜は、空気中の水蒸気が、冷えた葉などの表面で直接、氷の結晶になったものです。

第2問 気温が3℃なら葉に霜はできない

もう一度考えてみよう。 空気の温度と葉の温度は、同じとはかぎりません。

正解! 気温がプラスでも、葉の表面が十分に冷え、水蒸気の条件がそろえば霜はできます。

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いいえ。 葉の表面が、気温より冷たくなることがあります。葉の温度が0℃より低くなり、水蒸気が氷としてつく条件がそろえば、気温がプラスでも霜はできます。

第3問 百人一首の白い霜はなぜ夜更けを感じさせる

正解! 白い霜を、夜の冷えこみが進んだ手がかりとして読めます。ただし、霜だけで何時かはわかりません。

もう一度考えてみよう。 霜ができ始める時刻は日によってちがいます。霜だけで何時かはわかりません。

もう一度考えてみよう。 月が冷たさを送るのではなく、晴れた夜に地面が熱を失って冷えます。

答えを見る答えを閉じる

気象のしくみを重ねると、日がしずんだあとに表面が熱を失い、冷えこみが進んだことを感じさせるから、と考えられます。ただし、霜だけで時刻がわかるわけではありません。

出典と参考資料

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この記事を書いた人

図書館でブログを書く、とある会社の副社長。

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