「霧のため、飛行機の出発が遅れています」
空港で、こんなお知らせを聞いたことはありませんか。窓の外は真っ白。いつもなら見える飛行機や、遠くの建物がかすんでいます。
この白いものの正体は、空気中に浮かぶ、とても小さな水のつぶです。空気が冷えることなどをきっかけに、目に見えない水蒸気が、水のつぶに変わってできるのです。
でも、どうして空港に霧ができるのでしょう。そして、小さな水のつぶが、どうして大きな飛行機を困らせるのでしょう。
オチュンといっしょに、霧のひみつを見にいきましょう。
① 霧の材料は、見えない水蒸気
水たまりが、いつの間にか小さくなっていたことはありませんか。水は、気体の水蒸気(すいじょうき)になって、空気の中へ出ていきます。これを蒸発(じょうはつ)といいます。
水蒸気は透明で、目には見えません。白く見える霧は、すでに水蒸気から、小さな水のつぶに変わっています。
では、その変身はいつ起こるのでしょう。
同じ量の水蒸気でも、空気の温度が下がると、水のつぶに変わりやすくなります。 空気が十分に冷えると、水蒸気の一部が、空気中の小さなちりなどを足場にして、水のつぶになります。水蒸気が水のつぶに変わることを、凝結(ぎょうけつ)といいます。

冷たい飲み物のコップに、水滴(すいてき)がつくのも、まわりの空気が冷やされ、水蒸気が水に変わるためです。コップから水がしみ出したのではありません。
ただし、コップの表面につく水滴と、空中に浮かぶ霧では、水のつぶがある場所がちがいます。 地面の近くの空気中に、小さな水のつぶがたくさん浮かぶと、霧になります。
② 霧と雲は、どこがちがうの?
空に浮かぶ雲にも、小さな水のつぶでできたものがあります。地面に接しているのが霧、地面からはなれて空に浮かんでいるのが雲、と考えるとわかりやすいでしょう。
山の上で雲の中に入ると、自分のまわりは霧のように真っ白になります。同じ水のつぶの集まりでも、どこから見ているかで、見え方が変わるのですね。

一つひとつの水のつぶは、ほぼ透明です。でも、たくさん集まると、光をいろいろな向きへ散らすため、まわりが白く見え、遠くの景色が見えにくくなります。
「霧」と「もや」の分かれ目は?
気象観測では、小さな水のつぶで、水平方向に見通せる距離が1km未満になった状態を「霧」といいます。この見通せる距離を視程(してい)といいます。「もや」は、水のつぶや湿った小さな粒のために、見通しが1km以上、10km未満になった状態です。
ここからは、代表的な霧のでき方を5つ見てみましょう。
③ 霧の種類
晴れた夜にできる「放射霧」
秋の朝、田んぼや広場が、白い霧につつまれていることがあります。前の夜が晴れて、風が弱かったなら、放射霧(ほうしゃぎり)かもしれません。
地面は、目に見えない赤外線(せきがいせん)を出して、熱を外へ送っています。夜になって太陽からのあたためがなくなると、地面は冷えていきます。このような冷え方が放射冷却(ほうしゃれいきゃく)です。
冷えた地面に接する空気も冷やされます。水蒸気が十分にあれば、水のつぶができ、地面の近くに霧が広がります。

放射霧のポイントは、晴れ・弱い風・水蒸気です。晴れた夜は雲が多い夜より地面が冷えやすく、風が弱いと、地面の近くの冷たい空気が、上の暖かい空気と混ざりにくくなります。
ただ寒いだけでは、霧ができるとはかぎりません。材料になる水蒸気も必要なのです。
暖かい空気が冷たい海へ。「移流霧」
こんどは、海の上を想像してみましょう。
暖かく湿った空気が、冷たい海の上へ流れてくると、海面に近い空気が冷やされます。十分に冷えると、水蒸気が水のつぶになり、霧ができます。これが移流霧(いりゅうぎり)です。「移流」は、空気が流れて移動することです。

海でできた霧が、風で陸へ流れこむこともあります。海岸にある空港が、その霧につつまれる場合もあります。
放射霧とちがい、移流霧は昼間にもでき、風があるときにも広がります。 「朝ではないし、風もあるから霧は出ない」とは、いえないのですね。
川からほわほわ。「蒸気霧」
寒い朝、川や湖から、白い湯気のようなものが立ちのぼることがあります。
水面が、上にある空気より暖かいと、水面から蒸発した水蒸気をふくむ空気が、まわりの冷たい空気と混ざります。そのとき、十分に冷えて水のつぶができると、蒸気霧(じょうきぎり)になります。蒸発霧(じょうはつぎり)ともいいます。

名前に「蒸気」とついていても、白く見えている部分は、水蒸気そのものではなく、小さな水のつぶです。
前線の近くでできる「前線霧」
暖かい空気と冷たい空気の境目を前線(ぜんせん)といいます。前線の近くでできる霧のひとつが、前線霧(ぜんせんぎり)です。
たとえば、暖かい雨が下にある冷たい空気の中を落ちると、雨の一部が蒸発して水蒸気になります。水蒸気が増えて空気が十分に湿ると、小さな水のつぶができ、霧になることがあります。
雨のつぶがそのまま霧になるのではなく、蒸発した水が、もう一度小さな水のつぶになるのですね。

山の斜面でできる「滑昇霧」
湿った空気が風に流され、山の斜面にそって上へとのぼることがあります。上空では空気を押す力が弱くなるため、のぼった空気はふくらんで冷えます。
空気が十分に冷えると、水蒸気の一部が小さな水のつぶになり、霧ができます。これを滑昇霧(かっしょうぎり)といいます。斜面を上昇する空気によってできる霧です。

ここまでの5つを、くらべてみましょう。
表は横にスクロールできます。
| 霧の名前 | 何がきっかけ? | 注目する場所 |
|---|---|---|
| 放射霧 | 夜に地面が冷え、近くの空気も冷える | 晴れて風が弱い夜の地面 |
| 移流霧 | 暖かく湿った空気が、冷たい海や地面の上を流れる | 冷たい海や地面と、その上の空気 |
| 蒸気霧 | 水面から加わる水蒸気と、まわりの冷たい空気が混ざる | 空気より暖かい川や湖など |
| 前線霧 | 雨が蒸発し、冷たい空気が十分に湿る | 前線の近くの冷たい空気 |
| 滑昇霧 | 湿った空気が山の斜面を上り、ふくらんで冷える | 山の斜面 |
霧には、ほかのでき方もあります。また、実際の霧は、いくつかのしくみが重なってできることもあります。
④ 霧は、なぜ飛行機の大敵なの?
いちばんの問題は、滑走路(かっそうろ)や目印が見えにくくなることです。滑走路は、飛行機が離陸するときや、着陸するときに使う長い道です。
パイロットは、飛行機の計器や地上からの情報を使いながら、安全を確かめます。とくに地面の近くでは、滑走路の位置や灯りなどを、必要な条件に合わせて確かめなければなりません。

空港では、滑走路の灯りなどが、どのくらい先まで見えるかも調べています。これを滑走路視距離(かっそうろしきょり)といいます。
着陸を助ける装置もあります。たとえばILS(アイエルエス)は、地上からの電波で、滑走路へ向かう道すじを飛行機に知らせるしくみです。設備などの条件がそろえば、見通しが悪いときの着陸を助けられます。
それでも、安全に離着陸するための条件を満たせなければ、出発を待ったり、着陸をやり直したり、別の空港へ向かったりします。霧による遅れは、空の安全を守るための判断でもあるのです。
オチュン⑤ 朝の霧は、なぜ消えるの?
朝は真っ白だったのに、日が高くなると、いつの間にか景色が見えてくることがあります。
放射霧の場合は、日ざしで地面が暖まり、近くの空気も暖まると、霧の水のつぶが蒸発して、目に見えない水蒸気へ戻ることがあります。水がなくなったのではなく、見えない姿に変わったのですね。


ただし、どの霧も、朝日が出ればすぐに消えるわけではありません。 霧が厚かったり、冷たい海の上へ湿った空気が流れこみ続けたりすると、長く残ることもあります。
⑥ 窓からできる、霧のミニ観察
霧の朝に出会ったら、まずは家の窓から、安全に観察してみましょう。
- どこが見えなくなった? いつも見える木や建物とくらべてみましょう。
- 前の夜はどんな天気? 晴れていましたか。風は弱かったですか。地面はぬれていましたか。
- 時間がたつとどうなる? 日が差したあと、見える景色が変わるか、同じ場所から見てみましょう。
川の近くに霧が見えても、でき方は一つとはかぎりません。見た場所だけで決めつけず、前の夜の天気や、空気と水の温度のちがいも、手がかりにしてみましょう。
霧の日は、車からも人が見えにくくなります。観察のために道路へ出たり、川岸や空港の立ち入り禁止の場所へ近づいたりせず、安全な場所から楽しんでください。
⑦ オチュンと確認! 霧の復習クイズ5問
選択肢をクリックすると、正解と解説がその場に表示されるよ。何度でも選び直せます。
第1問 白く見える霧の正体は?
第2問 放射霧ができやすいのは、どんな夜?
第3問 暖かく湿った空気が、冷たい海の上で冷えてできる霧は?
第4問 蒸気霧は、どのようにしてできるの?
第5問 霧が濃いと、飛行機はなぜ困るの?
霧を見かけたら、「白いものがある」で終わらず、「水蒸気が、どこで、どうやって水のつぶになったのかな」と考えてみてください。いつもの朝の景色が、小さな気象の教室になります。
出典と参考資料
- 気象庁 はれるんランド「もや、霧、霞、雲のちがいは?」 — 霧の正体、雲との関係。
- 気象庁「氷、霜、霧、雷、日照時間」 — 視程、霧、もやの定義。
- 長野地方気象台「秋の特徴」 — 霧が白く見える理由、放射霧・移流霧・蒸気霧・前線霧・滑昇霧などのでき方。
- 米国国立気象局「Radiation Fog」 — 地表付近の夜間の冷却、弱い風、日中の霧の変化。英語の資料です。
- 米国国立気象局「Advection Fog」 — 暖かく湿った空気が冷たい地表へ移動してできる霧、風による移動と持続。英語の資料です。
- 米国国立気象局「Fog Over Water」 — 冷たい水面上にできる移流霧、海から陸への霧の移動。英語の資料です。
- 英国気象庁「What is fog?」 — 凝結、蒸気霧での蒸発と空気の混合、霧が薄くなるしくみ。英語の資料です。
- 中部航空地方気象台「航空機の運航と気象」 — 視程が運航に与える影響、離着陸の判断。
- 気象庁「滑走路視距離観測装置」 — 滑走路上の見通しと、その観測。
- 国土交通省航空局「空の安全を守るツバサノシゴト」 — ILSによる着陸の支援。









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