オチュンの鳥と昔話ノート
長い尾の鳥をたずねて 中国 韓国 佐賀へ
織姫と彦星が出会う七夕の夜。広い天の川を渡るために、鳥たちが橋をかけてくれる――そんなお話を知っていますか。その鳥が、白と黒の羽に長い尾をもつカササギです。空の物語から地上の暮らしへ。オチュンと一緒に、鳥の姿と、人がそこに重ねてきた願いをたどってみましょう。

天の川にかかる鵲の橋
カササギは、漢字で「鵲」と書きます。七夕の伝説に出てくる「鵲橋(じゃくきょう)」は、カササギたちがつくる橋のこと。「かささぎの橋」とも呼ばれます。
七夕には、土地や時代によってさまざまな語り方があります。ここでは、中国で伝えられてきた、鳥が二人の再会を助ける場面を中心にお話しします。
昔話 鵲の橋の再話
むかし、牛を飼う牛郎と、布を織る織女という二人がいました。けれども二人は、天の川の両岸に引き離されてしまいます。
会いたくても、川はあまりに広く、向こう岸へ渡れません。
そんな二人のために、空からカササギたちが集まってきました。一羽、また一羽。鳥たちは翼を寄せ合い、天の川の上に、長い橋をつくっていきます。
二人は鳥の橋を渡り、ようやく再会できました。それから毎年、旧暦の七月七日になると、カササギたちが橋をかけ、年に一度の出会いを助けるようになったといいます。
このお話に登場する牛郎は、日本でいう彦星、織女は織姫にあたります。七夕は、天の川をはさんで離れて暮らす二人が、年に一度だけ会える物語として親しまれています。ここで紹介した伝説では、カササギたちが天の川に橋をかけ、二人が川を渡って会えるようにしてくれるのです。
オチュン伝説の参考:中国文化・旅游部 七夕の由来と習俗/漢字ペディア 鵲の橋。日本での星の呼び名は国立天文台 七夕について教えて。上の昔話は、伝承をもとに平易な言葉で書き直した再話です。
カササギはどんな鳥


お話から地上に目を戻すと、カササギはスズメ目カラス科に属する野鳥です。名前に「サギ」とありますが、アオサギやシラサギの仲間ではありません。現在、日本野鳥の会の図鑑では学名を Pica serica としています。
見分ける手がかりは、白と黒の配色と長い尾。頭やのど、胸の上部は黒く、肩やお腹には白い部分があります。黒い翼や尾も、光の当たり方によって青や緑のつやを帯びて見えます。遠くでは白黒、近くでは思いがけない色が見える鳥なのです。
参考:日本野鳥の会 BIRD FAN カササギ/国立環境研究所 カササギ。古い資料には学名が Pica pica と記されているものもあります。
カササギはどこに暮らす?
カササギの生息地を知ると、昔話の鳥が、現実のどんな景色の中で暮らしているのか見えてきます。


日本では 九州北西部と北海道の一部に
日本でよく知られているのは、佐賀平野を中心とする九州北西部です。佐賀県だけでなく、福岡・長崎・熊本の一部にも生息し、有明海の周りの田園地帯などで、一年を通して暮らしています。
北海道でも、苫小牧・室蘭などに定着し、繁殖しています。本州などにも記録がありますが、全国のどこでも普通に見られる鳥というわけではありません。
世界では 東アジアを中心に
世界では、朝鮮半島や中国、ロシア極東など、東アジアを中心に分布し、インドシナ北部にも見られます。
田畑や住宅地、公園も暮らしの場
地面で食べ物を探せる開けた場所に、木々などが点在する環境を利用します。田畑の周りだけでなく、住宅地や公園も暮らす場所です。北海道・苫小牧の調査でも、公園の短い草地や住宅の庭などを利用する姿が確かめられています。
生息地の参考:日本野鳥の会 BIRD FAN カササギ/佐賀県 カササギの紹介/山階鳥類学雑誌 北海道の分布
世界の分布と環境の参考:香港観鳥会 世界の分布/苫小牧の生息環境研究
30cm定規で大きさを比べる
カササギの全長は、約45cm。数字だけでは、小鳥なのか大きな鳥なのか、迷ってしまいますね。身近な30cmの定規を1本半、横につないだ長さを思い浮かべてみてください。30cmに、その半分の15cmを足したくらいです。


ここで大切なのは、長い尾も含めて約45cmということ。丸い胴体だけで45cmあるわけではなく、立ったときの高さが45cmという意味でもありません。長い尾まで目で追うと、すらりとした全体の姿をつかめます。
| 比べるもの | 長さ | イメージ |
|---|---|---|
| カササギの全長 | 約45cm | くちばしの先から尾の先まで |
| 30cmの定規 | 1本半で45cm | 定規1本に、その半分を足した長さ |
| A4用紙の長い辺 | 1枚分で29.7cm | カササギの全長は、その約1.5倍 |



全長の参考:日本野鳥の会 BIRD FAN。定規とA4用紙との比較は、全長約45cmをもとにした計算上の例です。
国を渡って伝わる鳥の物語
中国では 手仕事への願いもこめて
中国の七夕は「乞巧節(きっこうせつ)」とも呼ばれ、針仕事などの上達を織女に願う習わしがあります。恋する二人の再会と、上手に手を動かして暮らしたいという願い。その両方が、七夕の文化に息づいています。
物語に出てくる七月七日は旧暦の日付です。現在の日本でよく行われる新暦七月七日の七夕と、同じ日になるとは限りません。
韓国では カラスも橋づくりに加わる
韓国の七夕の語りには、カササギだけでなく、カラスも一緒に橋をつくるものがあります。その橋が「烏鵲橋(オジャッキョ)」。「烏」はカラス、「鵲」はカササギです。よく似た物語でも、登場する鳥に違いがあるのが面白いところです。
また韓国では、カササギが鳴くと、うれしいお客さんがやって来るとする言い伝えもあります。鳥の声を、よい知らせと結びつけて受け止めてきたのですね。
参考:KBS WORLD 韓国の七夕と牽牛 織女/韓国国立国語院 カササギの項目
ほんとにあった!大阪にある「かささぎ橋」
日本語でも「鵲の橋」は、七夕の夜に二人を会わせる橋を意味し、人と人の仲を取り持つもののたとえにもなっています。鳥のつくる橋が、人をつなぐ言葉になったのです。
大阪府枚方市では、天野川に実際に「かささぎ橋」が架かっています。名前の由来は、カササギが七夕の二人を橋渡ししたというお話。天上の橋が、町の風景の中にも残っていると思うと、橋の名前を読むのも楽しくなります。


参考:漢字ペディア 鵲の橋/枚方市 七夕スポット/ひらいろ かささぎ橋の写真/ぐうたらたぬき途中下車 鳥の装飾の写真
百人一首に詠まれた かささぎの橋
百人一首の第六番にも、カササギの橋を詠んだ歌があります。中納言家持(ちゅうなごんやかもち)の歌として伝わる一首です。
かささぎの 渡せる橋に
おく霜の 白きを見れば
夜ぞ更けにける
大まかな意味は、「カササギがかけたという橋に、白い霜が降りている。その白さを見ていると、夜もすっかり更けたのだなあ」ということです。
この「橋」には、冬の夜空に天上の橋を思い描いたとする読み方と、宮中の御殿へ上がる階段「御階(みはし)」を天上の橋に見立てたとする読み方があります。どちらも、七夕伝説に出てくる「鵲の橋」を踏まえた読み方です。
この歌は『新古今和歌集』では冬の歌に収められています。七夕の伝説に登場する「鵲の橋」を、霜が降りる冬の夜の景色に重ねて詠んだ一首なのです。
佐賀で親しまれるカチガラス
物語の中では、空に橋をかけるカササギ。佐賀では、もっと身近な「カチガラス」の名で親しまれています。「カチカチ」と聞こえる鳴き声にちなむ呼び名です。図鑑では「カシャカシャ」とも表される声を、田んぼの近くで耳にすることがあります。
佐賀のカササギの来歴には、まだはっきりしない部分があります。16世紀から17世紀初めごろに朝鮮半島から運ばれたという説はよく知られていますが、大名が持ち帰ったという伝承を裏づける明確な証拠はありません。語り継がれてきた話と、確かめられた歴史を分けて受け止めたいところです。
1923年には、佐賀・福岡の一部を指定地域とする「カササギ生息地」が、国の天然記念物に指定されました。1965年には佐賀県の県鳥にも選ばれています。地域の人に親しまれる鳥であると同時に、その暮らす場所も大切にされてきたのです。
人のそばで生きる鳥に出会ったら


カササギは昆虫や果実、穀類、小動物などを食べる雑食性の鳥で、地面に降りて食べ物を探すこともあります。小枝を集めて大きな球形の巣をつくり、木の上だけでなく電柱に巣をつくることもあります。
人の近くに暮らすため、いつもほほえましい関わりばかりではありません。果実を食べたり、電柱の巣が設備の支障になったりすることもあります。親しみを持ちながら、農家の暮らしや日々の安全にも目を向けることが、共に暮らすために大切です。
もし出会えたら、まずは離れた場所から、こんなところを見てみましょう。
- 尾の長さを見る。くちばしから尾の先まで、ゆっくり目で追ってみる。
- 白い肩とお腹を見る。光の向きで、黒い羽が青や緑に見えるかもしれません。
- 声と歩き方を観察する。鳥がこちらを気にして動きを止めたら、少し離れて見守る。
巣やヒナに近づきすぎず、餌で呼び寄せずに観察しましょう。電柱の巣が気になるときは、自分で触らず電力会社などに相談します。また、放置された針金などが巣の材料になることもあるため、金属のごみを残さないことも、身近にできる配慮です。
生態の参考:国立環境研究所 カササギ/日本野鳥の会 カラスとその仲間について。地域での暮らしと巣材の注意は佐賀県の紹介を参考にしています。
昔話では、会えない二人をつなぐ橋になった鳥。現実の世界では、田んぼを歩き、声を交わし、長い尾を揺らしながら暮らしています。
七夕の夜に天の川を探すときも、昼間に白黒の鳥を見かけたときも。「あの橋をかけた鳥かな」と、カササギの姿を思い出してみてください。
記事の復習クイズ 全8問
記事の内容を、8問で振り返ってみましょう。選択肢を押すと、正解と解説が表示されます。別の選択肢を押して、答えを確かめることもできます。
第1問 / 全8問『鵲の橋』の伝説で、カササギたちは何をしましたか?
A. 二人を別々の岸へ引き離した
B. 天の川に橋をかけ、二人の再会を助けた
C. 二人に牛の飼い方を教えた
第2問 / 全8問カササギは、何科の鳥でしょう?
第3問 / 全8問カササギの『全長約45cm』は、どこからどこまでの長さでしょう?
A. くちばしの先から、長い尾の先まで
B. 頭から胴体の終わりまでで、尾は含まない
おしい! 正解は「A. くちばしの先から、長い尾の先まで」です。
全長は、くちばしの先から尾の先までの長さです。カササギの約45cmには長い尾も含まれ、30cm定規を1本半つないだくらいに当たります。
C. 地面から、立ったときの頭のてっぺんまで
おしい! 正解は「A. くちばしの先から、長い尾の先まで」です。
全長は、くちばしの先から尾の先までの長さです。カササギの約45cmには長い尾も含まれ、30cm定規を1本半つないだくらいに当たります。
第4問 / 全8問佐賀で親しまれている、カササギの呼び名は?
第5問 / 全8問佐賀のカササギの来歴について、記事で紹介した説明はどれでしょう?
A. 日本には暮らしていない鳥である
おしい! 正解は「C. 大名が持ち帰ったという伝承はあるが、明確な証拠はない」です。
16世紀から17世紀初めごろに朝鮮半島から運ばれたという説はあります。ただし、大名が持ち帰ったという伝承を裏づける明確な証拠はなく、確定した歴史としては扱っていません。
B. 誰が何年に連れてきたか、すべて確定している
おしい! 正解は「C. 大名が持ち帰ったという伝承はあるが、明確な証拠はない」です。
16世紀から17世紀初めごろに朝鮮半島から運ばれたという説はあります。ただし、大名が持ち帰ったという伝承を裏づける明確な証拠はなく、確定した歴史としては扱っていません。
C. 大名が持ち帰ったという伝承はあるが、明確な証拠はない
第6問 / 全8問韓国の『烏鵲橋』の語りでは、どの鳥たちが一緒に橋をつくりますか?
第7問 / 全8問『かささぎの 渡せる橋に…』の歌は、『新古今和歌集』では何の季節の歌に収められていますか?
第8問 / 全8問カササギに出会ったときの観察方法として、よいものは?
A. 餌を置いて近くへ呼び寄せる
おしい! 正解は「B. 巣やヒナに近づきすぎず、離れて見守る」です。
鳥の暮らしを妨げないよう、離れた場所から観察しましょう。巣やヒナには近づきすぎず、餌で呼び寄せないことも大切です。電柱の巣は自分で触らず、電力会社などに相談します。
B. 巣やヒナに近づきすぎず、離れて見守る
C. 電柱にある巣に触って確かめる
おしい! 正解は「B. 巣やヒナに近づきすぎず、離れて見守る」です。
鳥の暮らしを妨げないよう、離れた場所から観察しましょう。巣やヒナには近づきすぎず、餌で呼び寄せないことも大切です。電柱の巣は自分で触らず、電力会社などに相談します。









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