B787のエンジンはなぜギザギザ? 音を小さくする工夫

空港の窓辺のオチュンが、駐機中のB787を横から眺める。翼の下のエンジンにギザギザの後端が見える

空港の窓辺で、オチュンがB787を見つけました。翼の下にある大きなエンジン。前から見るとまん丸なのに、後ろの縁はノコギリみたいにギザギザです。

「どうして、ここだけギザギザなんだろう?」

この形はシェブロンと呼ばれます。エンジンの後ろで空気の混ざり方を変えて、ジェットの音を小さくする工夫です。空気がエンジンに入るところから、順番に追ってみましょう。

目次

ギザギザは、エンジンの後ろの縁にある

B787に搭載されたGEnx-1Bを斜め後ろから見たイラスト。白い外側カバーの後ろの縁にシェブロンが並び、その内側に金属製の排気口がある
図1 B787のGEnx-1Bを斜め後ろから見たイラスト。白い外側カバーの後ろに並ぶギザギザがシェブロンです。吸気口は左奥にあります。

エンジンの前にある大きな丸は、空気を取り込む吸気口です。中をのぞくと、扇風機のような大きなファンが見えます。

目を後ろへ移すと、エンジンを包むカバーの縁に、三角の突起が並んでいます。B787で外から見つけやすいのは、このナセル(エンジンを包むカバー)の後端のシェブロンです。突起は後ろ向きに付いています。

オチュン

前の丸い入口から、後ろのギザギザまで目でたどると、見つけやすいね!

エンジンに入った空気は、2つの道を通る

ターボファンを横から見た断面図。ファンの後で空気が分かれ、青い流れはコアの外側を通る。オレンジの流れは左から圧縮機、燃焼室、タービンを通り、右から熱い排気として出る。
図2 ターボファンを横から見た断面の模式図。上下の青い矢印は、コアをぐるりと囲む同じ通り道です。オレンジを左からたどると、圧縮機で空気が圧縮され、燃焼室で燃料が燃えます。高温のガスはタービンを回し、右の排気口から出ます。

B787のエンジンはターボファンと呼ばれる種類です。前の大きなファンで空気を後ろへ送り、入った空気は2つの道に分かれます。

  • コアの外を通る空気。入った空気の多くはこちらへ。エンジンの中心部をぐるりと囲む通り道を流れます。
  • コアの中を通る空気。中心部に入った空気は圧縮され、燃料と一緒に燃えます。その後、高温の排気として後ろに出ます。

出口の先には、飛行機の周りを流れる空気もあります。速さの違う流れが出会うところが、ギザギザの工夫を考えるポイントです。

速さの違う空気が混ざると、音が生まれる

たとえば、速い流れがゆっくりした水に流れ込むところでは、境目に渦ができます。空気は目に見えませんが、エンジンの後ろでも、速さの違う流れが混ざるところで渦ができます。

川岸のオチュンが、速い流れとゆっくりした流れの境目にできた渦を眺める
挿絵 細く速い流れがゆっくりした川に合流するところ。境目の渦に注目。

この混ざり方には細かなゆらぎがあり、周りの空気の圧力もゆれます。そのゆれが伝わって聞こえる音の一部を、ジェット騒音と呼びます。大きな渦は、低い「ゴーッ」という音に関わります。

ギザギザは、空気が混ざるきっかけをつくる

オチュンがジェットエンジンの模型を2つ見比べる。左は外側カバーの縁がなめらかで、右はギザギザ。どちらも中央に金属の排気口と先の細い円すいが見える
挿絵 ジェットエンジンの模型を、どちらも出口側から見たところ。外側の白いカバーの縁に注目すると、左はなめらかで、右にはシェブロンがあります。

なめらかな出口でも、速さの違う空気は下流で混ざります。シェブロンがあると、三角の突起のまわりにできる小さな渦が隣り合う流れを巻き込み、出口の近くで混ざりやすくなります。そうして、後ろに続く大きな渦の育ち方が変わり、低いジェット音を抑えられます。

翼の下のジェットエンジンを上下に並べて、シェブロンの有無を比べた色鉛筆風の図。上のなめらかな縁では、出口から離れたところで大きな渦が育つ。下のギザギザの縁では、出口の近くの小さな渦が周りの空気を巻き込む。薄紫は空気が混ざる範囲
図3 薄紫は、青の「周りの空気」とオレンジの「噴き出す空気」が混ざるところ。上の「なし」では出口から離れたところで大きな渦が育ちます。下の「あり」ではギザギザのすぐ後ろで小さな渦が空気を巻き込み、大きな渦が育ちにくくなります。これが低い「ゴーッ」という音を抑える工夫です。渦の位置や大きさはイメージです。

突起が大きければよい、とも限りません。混ぜ方を強くすると、条件によっては高い音が増えたり、推力や効率に影響したりします。形や突き出し方は、静かさとエンジンの性能を見ながら決めます。

オチュン

音をふさぐんじゃなくて、音が生まれるところの空気の流れを変えているんだ!

飛行機の音には、ほかの出どころもある

展望デッキの窓辺に立つオチュンと、着陸脚を出して草地の上空を飛ぶB787の色鉛筆画。
挿絵 着陸に向かう飛行機。着陸脚や翼のフラップのまわりでも、流れる空気から音が生まれます。

空港で聞こえる音には、エンジンの後ろで生まれる音のほかに、ファンが回る音もあります。着陸に近づくと、出した脚や、翼の後ろで広げたフラップの周りを空気が通る音も加わります。シェブロンが受け持つのは、その中でもジェットの流れが混ざるところの音です。

B787には、GE AerospaceのGEnx-1Bと、ロールス・ロイスのTrent 1000というエンジンの選択肢があります。また、B737 MAXにもシェブロンが使われています。展望デッキでギザギザを見つけたら、機種を当てる手がかりのひとつにして、翼や胴体の形も一緒に見比べてみてください。

関連する記事:B767とB787の見分け方 オチュンと覚える3つのポイント

オチュンと振り返る 5問クイズ

A・B・Cのどれかをクリック・タップすると、選んだ答えの正誤と解説がその場で開きます。

第1問 エンジンのギザギザはどこにある?

A前の吸気口の縁

おしい! 答えはBです。

B787で外から見つけやすいのは、ナセルと呼ばれる外側カバーの後端です。前の丸い吸気口から後ろへ目を移すと見つけられます。

B外側のカバーの後ろの縁

正解! 答えはBです。

B787で外から見つけやすいのは、ナセルと呼ばれる外側カバーの後端です。前の丸い吸気口から後ろへ目を移すと見つけられます。

C回転するファンの先

おしい! 答えはBです。

B787で外から見つけやすいのは、ナセルと呼ばれる外側カバーの後端です。前の丸い吸気口から後ろへ目を移すと見つけられます。

第2問 ファンに入った空気の多くは、どこを通る?

Aエンジンの中心部を囲む通り道

正解! 答えはAです。

ターボファンでは、空気の多くが中心部の外を通ります。一部は中心部に入り、燃料を燃やした後に熱い排気として出ます。

Bそのまま客室につながる管

おしい! 答えはAです。

ターボファンでは、空気の多くが中心部の外を通ります。一部は中心部に入り、燃料を燃やした後に熱い排気として出ます。

C燃料を燃やす中心部

おしい! 答えはAです。

ターボファンでは、空気の多くが中心部の外を通ります。一部は中心部に入り、燃料を燃やした後に熱い排気として出ます。

第3問 シェブロンは、どうやって音を抑える?

A出口を閉じて音を閉じ込める

おしい! 答えはCです。

突起のまわりで小さな渦が生まれ、出口に近いところから流れが混ざります。大きな渦の育ち方が変わり、低いジェット音を抑えられます。

B回転するファンを止める

おしい! 答えはCです。

突起のまわりで小さな渦が生まれ、出口に近いところから流れが混ざります。大きな渦の育ち方が変わり、低いジェット音を抑えられます。

C速さの違う空気の混ざり方を変える

正解! 答えはCです。

突起のまわりで小さな渦が生まれ、出口に近いところから流れが混ざります。大きな渦の育ち方が変わり、低いジェット音を抑えられます。

第4問 着陸のとき、エンジン以外で音が出る場所は?

A窓のカーテン

おしい! 答えはBです。

着陸の前に出した脚やフラップの周りを空気が流れると、機体からも音が生まれます。

B着陸脚や翼のフラップの周り

正解! 答えはBです。

着陸の前に出した脚やフラップの周りを空気が流れると、機体からも音が生まれます。

C客室のシートベルト

おしい! 答えはBです。

着陸の前に出した脚やフラップの周りを空気が流れると、機体からも音が生まれます。

第5問 ギザギザが見えたら、B787と見分けられる?

Aギザギザは手がかり。翼や胴体も一緒に見る

正解! 答えはAです。

B787にもB737 MAXにもシェブロンがあります。翼の先や胴体の大きさも合わせて見ると、見分けやすくなります。

Bギザギザがあれば必ずB787

おしい! 答えはAです。

B787にもB737 MAXにもシェブロンがあります。翼の先や胴体の大きさも合わせて見ると、見分けやすくなります。

Cギザギザがあれば必ずB737 MAX

おしい! 答えはAです。

B787にもB737 MAXにもシェブロンがあります。翼の先や胴体の大きさも合わせて見ると、見分けやすくなります。

出典と参考資料

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この記事を書いた人

オチュン社長の付き人

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