飛行機のしっぽにもエンジンがある? APUの仕事

駐機したB787-9の着陸脚と高い尾部が見え、オチュンが地面からAPUの排気口を見上げている水彩風イラスト

空港で飛行機の後ろ姿を眺めていたら、しっぽの先に、小さな穴が見えました。

「翼の下に大きなエンジンがあるのに、ここにも何かあるの?」

その奥に隠れているのが、APU(エーピーユー)という小さなエンジンです。多くの旅客機で、照明や空調、出発前のエンジン始動を支えています。

飛行機を前へ押すためのエンジンとは、ひと味違う働き者。今回はオチュンと一緒に、しっぽの中の仕事をのぞいてみましょう。

オチュン

飛んでいくための大きなエンジンのほかにも、旅の準備を支えるエンジンがあるんだね!

目次

APUは、電気や空気の力をつくる小さなエンジン

APUは、Auxiliary Power Unitの頭文字。日本語では補助動力装置と呼びます。

名前は少し難しそうですが、まずは「飛行機が自分で電気などをつくるための、小さなエンジン」と考えてみてください。

旅客機は、地上で止まっている間も電気や空調を使います。乗客を迎える客室の明かり、操縦席の機器、機内を過ごしやすくする空気。そのためだけに大きな主エンジンを回し続ける代わりに、APUや空港の地上設備が働きます。

APUの代表的な仕事は、①電気をつくる、②空調を支える、③主エンジンの始動を助けるの3つ。具体的な供給の方法は、機種によって違います。

比べるところ主エンジンAPU
大きな役割飛行機を前へ進める力を生む機内で使う電気などの動力を供給する
ほかの仕事発電や、機種によっては圧縮空気の供給も担う空調や主エンジンの始動を支える
見える場所の例翼の下など多くの旅客機では、胴体最後部の中

APUは、主エンジンが止まったときに代わりに飛行機を押す「予備の推進エンジン」ではありません。機内で必要な力を支えるエンジンなのです。

しっぽの穴は、APU本体ではなく排気口

尾部の内部にあるAPU本体、空気を取り込む吸気口、胴体最後端の排気口を区別した、オチュン入りの模式図
一般的な旅客機の配置を簡略化した模式図です。装置の形、吸気口・排気口の位置は機種によって異なります。

多くの旅客機では、APUは胴体のいちばん後ろ、細くすぼまった「テールコーン」の中に収まっています。上に立つ垂直尾翼の中ではなく、胴体側にあるのがポイントです。

外から見つけやすいのは、その装置から出る排気を外へ流す排気口。しっぽの先に見える穴だけが、APUのすべてではありません。

APUを動かすには、外の空気を取り込む吸気口も必要です。吸気口から空気を取り入れ、内部で仕事をした後の排気を、別の出口から外へ流します。

「空気の入口」「中のエンジン」「排気の出口」を分けて見ると、しっぽの中の様子が少し想像しやすくなります。

オチュン

見えている穴は、出口なんだ! 本体は、その手前の胴体の中に隠れているんだね。

オチュンの図解で見る、APUの3つの仕事

APUが発電機を回して照明や機器に電気を送り、圧縮空気で空調装置と主エンジンのスターターを支える、一般的な方式の図解
圧縮空気を供給する一般的な方式の概念図です。配管や電気回路をそのまま表したものではありません。B787など、電気を中心に支える方式もあります。

① 電気をつくる

APUが発電機を回すことで、電気をつくれます。その電気が、機内の照明や操縦席の機器などを支えます。

翼の下の主エンジンがまだ動いていなくても、機内で出発の準備を進められる。APUは、そのための電源のひとつです。

ただし、客室に明かりがついているからといって、必ずAPUが動いているとは限りません。空港側から電気をもらっている場合もあります。

② 空調を支える

一般的な方式では、APUは圧縮空気も供給します。圧縮空気は、ぎゅっと圧力を高くした空気のことです。

その空気を空調装置で冷やしたり、温度を整えたりして、客室へ送ります。APUからいきなり冷たい風が出てくるわけではなく、空調装置と組み合わさって働きます。

ここで大切なのは、空調に使う圧縮空気と、燃料を燃やした後の排気は別の流れだということ。しっぽの排気口から出たガスを、客室へ送っているわけではありません。

③ 主エンジンの始動を助ける

主エンジンは、燃料を燃やし始める前に、内部の回転部分を回す必要があります。その最初の回転を助けるのが、スターターという装置です。

一般的な方式では、APUから送られる圧縮空気の力でスターターを動かし、主エンジンの回転部分を回します。やがて主エンジンは、自分で運転を続けられる状態になります。

APUそのものが主エンジンを押して回すのではなく、空気や電気を供給して、その始動を助けるのです。

オチュン

明かりも、空調も、大きなエンジンの最初のひと回しも。しっぽの中から支えているんだね!

APUは、バッテリーではなく燃料で動く

電気をつくると聞くと、大きなバッテリーのように思えるかもしれません。でも、一般的なAPUは、航空燃料を使って動くガスタービンエンジンです。

取り込んだ空気を圧縮し、燃料を燃やして、そのエネルギーで内部のタービンを回します。回転する力を使い、発電機や、供給用の空気を圧縮する装置などを動かします。内部の構成はAPUの型式によって異なります。

バッテリーが電気を蓄えておく装置なのに対し、APUは、燃料を使いながら電気などをつくる装置。だから、動かしている間は燃料を使い、排気や音も出ます。

「小さいから、ずっと回しておけばよい」というものでもないのですね。

B787は、主エンジンを電気で回して始動する

ここまでの図では、主に圧縮空気を使う方式を見てきました。でも、すべての飛行機が同じしくみではありません。

B787は、主エンジンを電気の力で回して始動する方式です。通常、その始動に必要な電気をAPUが供給します。APUが使えない場合には、条件に合う地上電源を使う方法もあります。

B787のAPU「APS5000」も、燃料を使うガスタービンです。メーカーの説明にある「オールエレクトリック」は、APU自体が電池だけで動くという意味ではなく、機体へ供給する動力を電気にまとめた設計を表しています。

「何を支えるか」と「どんな方法で支えるか」は、分けて考える。 APUの役割を知ったうえで、機種ごとの違いも楽しんでみてください。

駐機中は、地上の設備に助けてもらうことも

駐機中の旅客機に、上段では地上電源のケーブル、下段では地上空調の太いホースを接続したオチュンの図解
地上設備の代表的な役割を示した模式図です。接続位置や設備の形は、機種・空港によって異なります。

搭乗口の近くに止まっている飛行機の周りで、ケーブルや太いホースを見かけたことはありませんか。

その中には、地上電源から電気を送るケーブルや、地上空調から冷暖房の空気を送るホースがあります。電気を供給する設備と、空気を供給する設備は、役割が違います。

こうした設備を利用できれば、APUを動かす時間を短くできます。ANAやJALも、地上からの電力・空調の供給を活用して、APUの使用時間を減らす取り組みを紹介しています。

燃料の節約や、排出される二酸化炭素・騒音の低減につながる工夫です。実際にどの設備を使うかは、空港や駐機場所、機体、外の気温などの条件によって変わります。

機内でエアコンの風を感じたとき、「今はしっぽのAPUかな、それとも地上からかな」と考えると、搭乗前の時間にも発見が増えそうです。

オチュン

飛行機が自分でつくるときも、空港から受け取るときもあるんだね。地上の設備ともチームなんだ!

飛んでいる間も、APUはずっと動いている?

APUは、いつも回し続けるとは限りません。

主エンジンが動き始めると、主エンジン側の発電機などが、機体へ電気を供給できます。通常の飛行では、APUを止めている場面も多くあります。

一方、機種と条件によっては、飛行中に補助の電源として使うこともできます。地上で働くだけの装置、というわけではありません。

場面電気や空調を支えるものの例
搭乗口に駐機しているとき地上の電源・空調設備、またはAPUなど
主エンジンを始動する前後APUなどが準備や始動を支える
通常の飛行中主エンジン側の発電機などが担い、必要に応じてAPUも補助する

これは代表的な関係をまとめたものです。APUをいつ使うか、飛行中にどの高さまで使えるかなどは、機種や運航の条件で違います。

次に飛行機を見たら、しっぽと地上の設備にも注目

大きな主エンジンや翼は、遠くからでも目に入りやすい存在です。その一方、APUはしっぽの中で、出発前から旅を支えています。

覚えておきたいのは、「電気」「空調」「始動」の3つの仕事。そして、外から見える排気口と、その奥にある本体は別のものだということです。

次の空港では、ターミナルや展望デッキから見える範囲で、胴体の最後尾や、地上につながるケーブル・ホースも眺めてみてください。小さな穴や一本のホースにも、飛行機を動かすための仕事が見えてきます。

機種そのものにも興味が湧いたら、こちらの記事もどうぞ。

オチュン

空へ押し出す大きなエンジンと、機内の仕事を助ける小さなエンジン。見えないところにも、頼もしい仲間がいるんだね!

オチュンと振り返る APUクイズ

選択肢をクリック・タップすると、正解と解説が表示されます。

第1問 APUの主な仕事は、どれ?

A. 主エンジンの代わりに飛行機を前へ押す

おしい! 答えはBです。

APUは、機内で使う電気などを供給する補助動力装置です。飛行機を前へ押す予備の推進エンジンではありません。

B. 電気や空調、主エンジンの始動を支える

正解! 答えはBです。

APUは、機内で使う電気などを供給する補助動力装置です。飛行機を前へ押す予備の推進エンジンではありません。

C. 飛行機の向きをしっぽから操縦する

おしい! 答えはBです。

APUは、機内で使う電気などを供給する補助動力装置です。飛行機を前へ押す予備の推進エンジンではありません。

第2問 しっぽの先に見える小さな穴は?

A. APUの排気を外へ出す排気口の例

正解! 答えはAです。

多くの旅客機では、本体がテールコーンの中にあり、外から排気口が見えます。吸気口・本体・排気口を区別するのがポイントです。

B. APU本体のすべてが外に出ている部分

おしい! 答えはAです。

多くの旅客機では、本体がテールコーンの中にあり、外から排気口が見えます。吸気口・本体・排気口を区別するのがポイントです。

C. 客室に冷たい空気を送る吹き出し口

おしい! 答えはAです。

多くの旅客機では、本体がテールコーンの中にあり、外から排気口が見えます。吸気口・本体・排気口を区別するのがポイントです。

第3問 一般的な方式で、主エンジンの始動を助けるのは?

A. しっぽから出る排気で主エンジンを押す

おしい! 答えはCです。

一般的な方式では、圧縮空気でスターターを動かし、主エンジンに最初の回転を与えます。B787のように、電気で始動する機種もあります。

B. 客室のエアコンの冷たい風を当てる

おしい! 答えはCです。

一般的な方式では、圧縮空気でスターターを動かし、主エンジンに最初の回転を与えます。B787のように、電気で始動する機種もあります。

C. APUの圧縮空気でスターターを動かす

正解! 答えはCです。

一般的な方式では、圧縮空気でスターターを動かし、主エンジンに最初の回転を与えます。B787のように、電気で始動する機種もあります。

第4問 B787のAPUが通常の主エンジン始動に供給するものは?

A. 翼を動かす油圧だけ

おしい! 答えはBです。

B787は電気で主エンジンを回して始動し、通常はその電力をAPUが供給します。APU自体は燃料を使うガスタービンです。

B. 電気

正解! 答えはBです。

B787は電気で主エンジンを回して始動し、通常はその電力をAPUが供給します。APU自体は燃料を使うガスタービンです。

C. 客室から吸い出した排気ガス

おしい! 答えはBです。

B787は電気で主エンジンを回して始動し、通常はその電力をAPUが供給します。APU自体は燃料を使うガスタービンです。

第5問 駐機中のAPUの使用時間を短くできる方法は?

A. 利用できる地上電源や地上空調を使う

正解! 答えはAです。

地上から電気や空調用の空気を受け取れれば、APUを使う時間を減らせます。実際の使い方は、空港・機体・気温などの条件で変わります。

B. 排気口をふさいで音を小さくする

おしい! 答えはAです。

地上から電気や空調用の空気を受け取れれば、APUを使う時間を減らせます。実際の使い方は、空港・機体・気温などの条件で変わります。

C. 飛行中も含め、すべての機器を止める

おしい! 答えはAです。

地上から電気や空調用の空気を受け取れれば、APUを使う時間を減らせます。実際の使い方は、空港・機体・気温などの条件で変わります。

出典と参考資料

本文と図解は、航空会社・航空機メーカー・APUメーカーの公開資料をもとに構成しました。

情報確認:2026年11月7日。イラストは役割や位置関係を説明する模式図で、正確な設計図・配管図ではありません。APUの配置、供給方式、使用できる条件は機種によって異なります。

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この記事を書いた人

オチュン社長の付き人

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